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常磐線 日暮里〜水戸

【第40回】常磐線 日暮里〜水戸井


常磐線には独特のよさがある。いつ訪れても大都市圏特有の無機質さがなく、開放感溢れる普通列車が迎えてくれる。特急列車などには名車が揃う、車両のバラエティ豊かな常磐線を、引退間近の415系で味わってみた。

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屋根上の碍子は415系の証 白い車体に青帯が最後を飾る

デアゴスティーニ編集部

常磐線内原を行く415系最後の力走。MT54モーターをぶん回し、重たい交流機器をギュウギュウに満載して大迫力でぶっ飛ばす。足回りもしっかりしているので走りは強固そのもの。廃車になるのは惜しい。

気がつけばステンレス車両ばかりが行き交う上野駅に、いまだに鋼製車体の列車が威風堂々とやって来る。寝台特急? いや違う。常磐線勝田車両センターの415系交直流近郊型電車である。かつては「赤電」と通称されていたが、国鉄時代末期に変更された「白い車体に青帯」はすっかり定着した。ステンレス車体の1500番代もいる。屋根上に載った交流機器は415系の証。重厚な碍子たち……。
415系は日本の交直流電車の先駆けである、昭和35(1960)年に登場した401系がルーツで、モーターを出力アップさせた403系が登場。昭和46(1971)年に電源を50Hz/60Hz共用とした415系にマイナーチェンジが行なわれ、平成2(1990)年まで増備が続いたベストセラーだ。常磐線の交流電化とともに歩み、上野から終点の平(現・いわき)、水戸線など、交直区間を隈なく活躍してきたが、世代交代の波が押し寄せ、後輩のE531系に道を譲ろうとしている。415系が走った常磐線を上野から列車に乗り込み、その仲間たちが走る日暮里〜水戸間を颯爽と辿ってみよう。

青空ホームで乗る「いわき」行き 荒川を渡って緩行線を迎える

デアゴスティーニ編集部

のんびりゆったりの三河島ホーム。E531系もE231系も青空を望んで気持ちよさそうにやって来る。

上野を出ると輻輳する線路を渡って、最右手の常磐線の線路へ。京成電鉄もやって来る常磐線の起点、日暮里に着く。ここから一気に東北本線と分かれ孤軍奮闘となる。すぐに到着するのは三河島。過去の列車事故でも有名である、隅田川貨物駅からの貨物線との合流地点駅だが、狭い島式ホームのそれは、都会の駅とは思えないのんびり風情で、上野方は屋根のない青空ホームが残っている。ここに415系や、つい最近に103系と世代交代した15連のE231系が次々にやって来る。豪快だ。415系の普通列車は長距離の「いわき行き」がまだあり、青空ホームで「いわき行き……」の放送を聴いていると、最近の上野口から少なくなった郷愁を思いがけずに味わうことができる。行き先の方向幕にも「いわき」の文字がしっとり表示され、旅情はたっぷり。このままずっと乗り続けて、ずっと、旅をしたくなる。
北千住で東京メトロ日比谷線、東武鉄道、ライバルのつくばエクスプレスが寄り添い、賑やかになる。駅を出ると、地下に潜っていた東京メトロ千代田線が現れ、一緒に荒川を渡る。次の綾瀬からは常磐緩行線となり、複々線の線路となって驀進する。

103系も快走した快速線 名車揃いの常磐複々線

デアゴスティーニ編集部

651系特急「スーパーひたち」と東京メトロ6000系のすれ違い。ともに名車である。新型車に思える651系もデビューから19年目を迎え、6000系に至っては写真の量産車で38年の歳月が経つが、両者まったく見劣りしない。

この驀進街道は、かつてエメラルドグリーンの103系電車が通い慣れた道。駿足を誇り、MT55初期車のモーターをフルノッチで唸らせた、いにしえの常磐快速の道である。現車は平成18(2006)年3月に営業列車から退役。最後まで艶やかなグリーンで有終の美を飾ったが、E231系の軽快で駿足な走りは、重厚な103系とは対照的ながら、全開全速の走りにそのスピリットが感じられる。
モーターをホットに回転させたまま松戸に到着。すぐに発車。柏に向けて再び豪快に走る。馬橋で一瞬、総武流山電鉄の元西武鉄道車両とすれ違う。新松戸で武蔵野線をアンダークロスする。
常磐線のこの区間は多彩な形式のオンパレードだ。快速線には415系をはじめ、E231系、E501系、E531系、特急型の651系、E653系、機関車では貨物列車牽引のEF81、緩行線には203系、少数派の207系900番代、東京メトロ6000系、06系、209系1000番代が、ホームに佇んでいると次々にやって来る。
中でも、特急「スーパーひたち」として君臨する同線のスター、651系はトップクラスの名車といえるだろう。平成元(1989)年3月に、それまでの485系「ひたち」をフルモデルチェンジし、最高速度130km/hを達成させてデビュー。485系のボンネットを凌駕するかのような、新しい曲線で構成された流れるような前面形状。先頭部にはヘッドライトと愛称を表すLEDが輝き、常にキラキラ輝いている。ホワイトボディのそれにはデザインの隙がなく、美しい。特に運転台周りなどの処理は秀逸のひと言で、じっくりと眺めたくなるほどカッコイイ。
名車はまだまだある。東京メトロの6000系だ。当時、未知の分野であったサイリスタチョッパ制御の技術に挑み、昭和43(1968)年に第1次試作車を完成させ、昭和45(1970)年から量産が行なわれた新設計の車両だ。左右非対称で全面ガラスを1枚にし、窓のない非常扉がオフセットされるなど、時代的には
かなり斬新なデザインで、人々をあっと驚かせた。性能的にもサイリスタチョッパ、全電気指令による電力回生ブレーキ、軽量アルミ車体の採用などにより多大な電力節減効果が得られた。現在も銀色に輝くヘアライン仕上げのアルミボディは見劣りすることなく、すっかり地元に溶けこんでいる。
希少車なのは国鉄時代に製造された207系900番代だ。昭和61(1986)年製の国鉄初のVVVFインバータ制御車として、常磐緩行線に試作車10両編成1本が新製投入された。203系とは異なり205系をベースにしたステンレス車体で、全面貫通式とした独自のスタイルとなった。制御機器が高価で、コスト面で量産されることなく終わった幻の形式番代だ。しかし、のちにJR西日本がまったく異なる車両で同名形式を登場させている(福知山線脱線事故で一躍有名になった)ので紛らわしい。

取手〜藤代で電源切り換え 周辺鉄道交流化のその訳 

デアゴスティーニ編集部

「車内持ち込み容器」健在。さらに新鋭E531系のボックスシートで食べる。なんとか窓カマチに載った。うまかった。

さて、快速線を先へ急ぐと利根川を鉄橋で渡って取手に到着。ここで緩行線はおしまいで、常磐線の単独行路となる。
取手とくれば次は藤代。いわずと知れた交直流デッドセクションのある区間となる。この区間内で、直流から交流に電源を車上で切り換える。上野から続いた住宅地の風景も、取手からは急に田んぼが広がりローカルムードが漂ってくる。開けた風景に一直線に線路は進み、デッドセクション目指してノッチアップさせる。
そもそも、なんで取手にセクションがあるのかというと、石岡市柿岡に気象庁の地磁気観測所があり、ここで行なう地球電磁気象現象および、地殻変動に関する研究、観測に起因する。半径30km以内で直流電化をすると、電流が地面を伝わり流れ、自然の電磁気現象に影響をおよぼしてしまうため、交流電化の際、デッドセクションを取手〜藤代間に置いたのである。最近開業したつくばエクスプレスも例外ではなく、守谷〜みらい平間にデッドセクションを設け、わざわざ交流電化させている。古株では、取手で見られた関東鉄道常総線などは、複線で多くの列車数を誇る通勤路線であるにも関わらず、直流電化を行なっていない。これも地磁気観測所に対する配慮であり、今でもディーゼルカーが主役で、北海道のような複線非電化の光景が見られるタネあかしなのである。
列車に乗っていると「電源を切り換えます」の放送とともに、車内灯が消える。これが風物詩であったのだが、最近では車両の性能も良くなり、蓄電池で対応し電気が消えず風情がなくなった。しかし、403系からの古い車両では薄暗い白熱の非常灯のみが、ほのかに点灯するのみで、混雑時はかなり息苦しさもあったので、この進歩は良いことだろう。
気がつけば、佐貫、牛久と茨城の田んぼや畑の続くローカルな風景が車窓を彩り、モーターを唸らせ、座席を弾ませる。ひと駅ひと駅を辿っていくが、常磐線には、東北本線や高崎線などにはない、独特のローカル感があり、ボックスシートがよく似合う。

常磐線といえばボックスシート 新鋭E531系にもしっかり連結

デアゴスティーニ編集部

暮れなずむ南柏付近を行くE531系普通列車。基本はE231系を踏襲しているが、前面はE233系同様のニュースタイルなので新鮮だ。さらに最高速度が130km/hを可能としたのもE531系の特徴のひとつ。

上野口のボックシートといえば「ほろ酔い常磐線」というイメージがあったほど、常磐線のボックスシートは不可欠な存在である。それは、現在走行中である取手以北の中距離各駅にあるマイホームへの帰路に延々と電車に揺られ続けなければならないから、である。冬場はサラリーマンのお父さんがコートの襟を立て、ボックスシートにワンカップやさきイカを並べて小宴会が開かれる。415系の窓下のテーブルはそのためにあるようなものだ。現在も上野駅の売店のおつまみは大変に充実しているし、ビール、酎ハイ類ももちろん揃っている。
この、近郊型電車のボックスシートをロングシートに改造した初めての車両、それは常磐線の415系なのである。昭和57(1982)年、常磐線の混雑の緩和のため、オールロングシートにした500番代を登場させた。酔いどれお父さんたちは世知辛い思いをさせられたが、ボックスシートはまだ健在であり、利用率も高い。
そんな中、忽然と現れたのが常磐線の新しい主役となるべく新形式車両、E531系である。
E531系は、501系、E231系、E993系などをベースにした交直流電車で、平成17(2005)年に登場。座席幅はE231系より10mm広く、床面も35mm低く取られ、ホームとの段差を極力少なくした。車内のドアは視覚障害者が認識できる黄色のテープが貼られ、床にも同様の点字ブロックがあるなどの対策が施されている。ドア上部にはLED式の旅客案内表示器があり、開閉時にはドアチャイムが鳴動、ドアランプが点滅する。営業運転での最高速度は130km/hとなり、それに対応するよう設計された。そして、415系を置き換えるべく勝田車両センターに集中配置され、淘汰は進行しているが、なかなか板に付いて常磐線に馴染んでいる。4扉ロングシートが基本だが、15両編成のうち7両はセミクロスシート車、つまりボックスシートがあり、これもまずまずの掛け心地。大きなテーブルこそないが、飲み物を乗せる程度の窓カマチがちゃんとあり、おつまみなどにも十分対応できるので、新車に期待しようではないか。

車内持ち込み容器健在! ボックスシートよ永遠に

デアゴスティーニ編集部

とにかく速い! E653系「フレッシュひたち」。130km/h運転はもちろん、駅到着ギリギリまで加速します。

さて、列車は寒空を飛ばして土浦にやって来た。
 「ここで10分停車します」
こののんびり停車も、常磐線が単なる殺伐とした通勤路線でない証。駅弁屋だってある。意外だったのは立ち食いのそばスタンド。なんと今時「持ち込み容器」があるではないか! プラス20円の発泡スチロール容器にアツアツの汁の入ったそばを車内で食べられるのである。かつて「持ち込み容器」は全国的に見られ、車内で「食」が当たり前な時代は一般的だった。列車も食事もスピーディなスタイルも変化し、いつの間にか「持ち込み容器」を見かける機会が少なくなった。それが思いがけず首都圏の土浦で出会えるのだからうれしい。
これこそ「常磐線」である。車両が415系からE531系に変わろうと、つくばエクスプレスが開業しようと、どっこい常磐線は変わっていなかった。これが常磐線の温かさなのである。
列車は神立、高浜と軽快に飛ばす。カラフルなE653系「フレッシュひたち」に追い越され、なお快走。やがて水戸線が合流して友部に着く。
梅の開花では白一色に染まる偕楽園を横目に、偕楽園臨時停車場を過ぎれば、間もなく列車は水戸に到着だ。415系のモーターはまだまだ元気いっぱいである。ボックスシートのクッションもふかふかでへたりはない。
E531系は平成19(2007)年3月18日から2階建てグリーン車の営業を開始しているが、普通運賃、定期券だけで、お父さんも学生も誰もが座れる、ボックスシートのよさも、いつまでも大切にしてもらいたいものである。

※この記事は、週刊『鉄道データファイル』(デアゴスティーニ・ジャパン刊)を基に構成したものです。

公開日 2016/04/30


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