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「月光」

【第26回】「月光」


昭和20年代後半から30年代後半にかけて、東京〜大阪間の夜を飾った夜行客車急行4人衆といえば、「銀河」「明星」「彗星」「月光」だった。そのなかで「月光」はもっとも遅く登場した列車で、昭和40(1965)年に一度はその名が消えるが、2年後には世界初の寝台電車581系を使った最初の特急として復活を果たし、寝台電車の歴史を語るうえで欠かせない存在となった。

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最初から豪華な編成で誕生した東京〜大阪間の急行「月光」

デアゴスティーニ編集部

「月光」でのデビューを目前に控えた世界初の寝台電車581系。その後、東日本地区でも使用できる583系の登場で、全国に活躍の場を広げた。

東海道本線の電化は昭和20年代後半になってから大幅に進展し、昭和28(1953)年7月21日には名古屋まで、同年11月11日には稲沢まで完成した。稲沢電化時には東海道本線でダイヤ改正が実施され、東京〜大阪間の夜行急行では「銀河」「明星」「彗星」に続く第4の急行として「月光」が誕生した。昭和29(1954)年10月1日当時のダイヤは17列車/東京22時15分→大阪翌9時16分、18列車/大阪22時00分→東京翌9時24分で、上下列車とも4列車のなかで一番最後に発車していた。「月光」は昭和20年代に誕生した東京〜大阪間夜行客車急行のなかでは最後発だったが、編成のほぼ半分が1・2等寝台車、特別2等車、2等座席車で占められるという豪華な列車だった。
しかし、「月光」の1等寝台車連結の期間は短く、昭和30(1955)年7月1日、国鉄の制度改正により利用率の低い1等寝台車が廃止されることになり、寝台車は2等寝台車のみとなった。これまでの1等寝台車はそのまま2等寝台車として格下げ使用され、2等寝台車は旧1等寝台車個室タイプがA室(マロネ40など)、開放タイプがB室(マロネ40・41など)、従来の2等寝台でツーリストタイプのものがC室(マロネ29、スロネ30など)と区分され、当時の時刻表にはA・B・Cの部屋区分を示す寝台のセット図と該当する列車名が掲載されていた。
1等寝台車の廃止により寝台区分はしばらく2等のみという時期が続いたが、昭和31(1956)年には軽量構造による新系列の3等寝台車・ナハネ10が落成し、同年3月20日から東京〜大阪間の夜行急行に2両ずつ連結されることなり、「月光」にも登場した。戦後の3等寝台車の復活は、旅行の大衆化にひと役買い、戦前の3等寝台車にはなかった毛布やシーツ、カーテンが付くなど、サービスアップした。

「彗星」の寝台列車化後は座席車主体の編成に変貌する

デアゴスティーニ編集部

世界初の寝台電車特急として昭和42(1967)年に新大阪〜博多間に華々しく登場した「月光」だったが、活躍期間は約8年と短く、50.3改正で消滅。名称が復活した「つばめ」とは違い、「月光」の名は消滅後30年以上経った現在も見ることはできない。

昭和31(1956)年11月19日、ついに待望の東海道本線全線電化が達成され、東京〜大阪間を走る昼行特急「つばめ」「はと」はもちろんのこと、夜行客車急行も東海道区間については電気機関車(EF58)による牽引となった。これにより東京〜大阪間の各夜行急行は改正前より40分近いスピードアップとなり、名古屋〜大阪間では夏場の寝苦しい夜に窓を開けるのに、蒸気機関車の煤煙を気にする必要がなくなった。当時、3等寝台車はおろか2等寝台車にも冷房のない車両があり、座席車に至っては「つばめ」「はと」の1等展望車にしか冷房が装備されていなかった。それどころか、扇風機すらも2等車以上にしか装備されていなかった時代だったのである。
昭和32(1957)年10月1日改正では、僚友の「彗星」が寝台列車化されることになり、豪華な旧1等寝台車を「彗星」へ集中させるため、「月光」は座席車主体の編成に変貌した。以前から座席車主体の列車は「明星」が担当していたが、この時点で東京〜大阪間の夜行急行は「彗星」と昭和34(1959)年9月22日改正で不定期の寝台急行となった「あかつき」を除きほぼ似たような編成内容に落ち着いた。

東海道の座席夜行の電車化と夜行客車急行のオール寝台化

デアゴスティーニ編集部

南福岡電車区で憩う581系「月光」。写真は岡山発着に改められたのちのもので、シャッター付きのタイフォンを装備したクハネとなっている。

昭和33(1958)年10月1日、東京〜名古屋間の電車準急「東海」に1往復の夜行便が登場した。この「東海」は同年11月1日から順次153系電車に置き換えられることになり、以後、東海道本線の夜行急行にも次第に電車が進出する。1960(昭和35)年6月1日には東京〜姫路間に80系電車を使った不定期夜行急行「はりま」が登場、翌年3月1日には東京〜大阪間の昼行急行「なにわ」「せっつ」と共通運用の夜行急行「金星」が登場している。
そんな状況に対応して、昭和36(1961)年10月1日改正では、東京〜大阪間の夜行急行は、寝台車主体の列車は客車、座席車主体の列車は電車とする方針が打ち出され、この改正で増発された客車「金星」とともに、既存の「明星」「銀河」「月光」の寝台列車化が推進された。これにより、「月光」の3等座席車の一部が3等寝台車に置き換えられることになり、編成の大半が寝台車と1等車で占められ、東海道の夜行客車急行の一角を担う風格が出てきた。
東京〜大阪間の夜行客車急行は、その後も改正の度に新顏が登場し、昭和37(1962)年6月10日改正では不定期電車急行「第2六甲」を改め「あかつき」が復活、昭和38(1963)年10月1日改正では電車急行の「第2なにわ」を客車化した「すばる」が誕生した。「すばる」の登場により東京と関西を結ぶ夜行客車急行は7本となり、昭和39(1964)年3月末までには全列車がオール寝台車化され、東海道新幹線開業前の寝台急行黄金時代を築いた。編成上は昭和20年代に誕生した「銀河」「明星」「彗星」「月光」のみに旧1等寝台車のマロネ40・41が連結され、新参の急行と格の違いを見せつけていた。

最初の寝台電車特急として山陽路へ転じて再出発する

デアゴスティーニ編集部

「月光」を吸収して増発された「明星」。しかし、現在は「明星」の列車名も残ってはおらず、九州夜行から581・583系が撤退している。

昭和39(1964)年10月1日、東京〜新大阪間に待望の東海道新幹線が開業した。これにより、東海道本線の昼行特急はすべて廃止されたが、夜行急行についても整理の対象となり、東京〜大阪間の夜行客車急行は「月光」を含み「銀河」「明星」「金星」の4本のみとなった。この4本の編成内容は改正後も維持されたが、昭和40(1965)年10月1日改正では、同年11月1日に実施される東海道新幹線の大幅増発を控え、東京〜大阪間の夜行客車急行は「明星」「銀河」のみとなり、「月光」は「金星」とともにその名が消えてしまった。
その「月光」の名が復活したのは昭和42(1967)年10月1日改正のことだった。この年、車両運用の効率化を図るために電車の機動力を活かした寝台車の製作が企図され、世界初の寝台電車・581系が誕生した。夜は寝台車、昼は座席車として一編成二役の活用ができる同系は、この改正で新大阪〜博多間の夜行特急に充当されることになり、その名も「月光」と命名された。
寝台電車特急として再出発した「月光」のダイヤは7M/新大阪23時30分→博多翌9時20分、8M/博多19時45分→新大阪翌5時45分で、関西発の九州方面の夜行列車ではもっとも遅い時間に発車した。この「月光」のダイヤにはギミックがあって、新大阪に到着した8M「月光」は大分行きの1M「みどり」で折り返し、新大阪に到着した2M「みどり」は7M「月光」で折り返した。いずれも向日町運転所(現・京都総合運転所)では3時間程度の滞留時間があり、その間に寝台の解体・セットが行なわれていた。

山陽新幹線開業によりその名が消えたが復活の日が待ち望まれる

デアゴスティーニ編集部

博多駅で発車を待つ岡山行きの上り「月光」。このころはすでに末期にあたり、新大阪発着だった頃の輝きを見ることはできない。

昭和43(1968)年10月1日改正を迎えると、「月光」の受持ち区である南福岡電車区に581・583系が91両増備され、「月光」に不定期1往復が加わる。また、昼行「つばめ」「はと」のほか、東京〜大阪間の夜行急行からその名が転じてきた新大阪〜熊本間の「明星」、名古屋〜博多間の「金星」にも充当されるようになった。
山陽新幹線新大阪〜岡山間が開業した昭和47(1972)年3月15日改正では、長らく新大阪発着だった「月光」は岡山発着に改められ、定期1往復は岡山〜西鹿児島(現・鹿児島中央)間、不定期1往復は岡山〜博多間の運転となった。さらに昭和48(1973)年10月1日改正では不定期「月光」が定期化されたが、「月光」の活躍はそこまでで、山陽新幹線が博多まで全線開業した昭和50(1975)年3月10日改正では1往復が廃止され、1往復は運転区間を新大阪〜西鹿児島間とした上で「明星」に編入、またもや「月光」の名が消えてしまった。以来、復活の日が望まれるものの3度目の復活は果たしていない。

※この記事は、週刊『鉄道データファイル』(デアゴスティーニ・ジャパン刊)を基に構成したものです。

公開日 2015/02/15


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