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「アルプス」

【第31回】「アルプス」


おもに新宿〜塩尻〜松本間を結び、日本でも有数の山岳地帯を走るため、首都圏のクライマーやハイカー御用達の列車として名を馳せたのが「アルプス」だ。電車化後は165系を使用した電車急行の代表格となったが、相次ぐ特急列車増発のため、惜しまれながも平成13(2001)年12月に姿を消した。

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夜行の不定期列車でスタートした中央東線初の優等列車「アルプス」

デアゴスティーニ編集部

新宿を出発する気動車時代の「アルプス」。キハ58に冷房電源を供給するキハ65が編成に組み込まれている。気動車編成は昭和50(1975)年に姿を消した。

急行「アルプス」の元祖は、昭和23(1948)年7月1日から新宿〜松本間で運転を開始した愛称名なしの準急2403・2402列車だった。列車番号からもわかる通り、この列車は不定期列車で、昭和24(1949)年9月15日改正で定期の403・402列車となった。さらに昭和25(1950)年10月1日改正では407・408列車となり、翌年4月15日に「アルプス」と命名された。「アルプス」命名時のダイヤは407列車/新宿22時00分→長野8時00分、408列車/長野19時40分→新宿5時16分で、夜行運転だった。
昭和30年代前半は、全国の非電化亜幹線で急行・準急の気動車化が推進された。中央東線も例外ではなく、昭和35(1960)年4月25日にはキハ55型による急行が登場することになり、この列車に「アルプス」の名が冠された。これにより、従来「アルプス」を名乗っていた夜行準急は「穂高」に改称された。
昼行気動車急行にコンバートされた「アルプス」は2往復が設定され、ダイヤは401列車/新宿8時10分→松本12時35分、402列車/松本7時25分→新宿11時45分、403列車/17時00分→松本21時25分、404列車/松本16時30分→新宿20時55分だった。スイッチバックや急勾配区間を控えた中央東線を走るにも関わらず、客車準急では6時間以上かかっていた新宿〜松本間を約4時間20分で結び、大幅な速度向上をもたらした。また気動車「アルプス」と同時にキハ55型を使う共通運用列車として準急「第1・2白馬」が新宿〜松本間に設定されている。
中央東線優等列車の気動車化はこのように絶大な威力を発揮したことから、昭和36(1961)年10月1日改正では、さらなる気動車優等列車の増発や準急の急行格上げが図られ、「アルプス」は「上高地」「白馬」とともに新鋭の急行型気動車キハ58型グループで運転されるようになった。また、この改正では新宿〜松本間の気動車急行の間合いを利用して新宿〜甲府間に「かいじ」、新宿〜八王子〜高崎〜水上間(八高線経由)に「奥利根」といった準急が登場している。
中央東線の急行は伝統的に小海線や飯田線、私鉄の富士急行線へ直通する車両を併結するため、多層建て化した編成が多かったが、昭和37(1962)年4月14日には下りの「第1アルプス」、上りの「かいじ」に、富士急行線直通の準急「かわぐち」の併結を開始、新宿〜大月間では富士急行が国鉄キハ58型に準じて製造したキハ58001・58002を併結して話題を撒いた。さらに同年12月1日改正では401D「第1アルプス」に小海線直通の「八ケ岳」が併結されるようになり、従来の「かわぐち」と合わせて3階建てとなった。

中央東線の電化・165系化により昭和40年代に黄金時代を築く

デアゴスティーニ編集部

ヘッドマークをつけた165系時代の「アルプス」。一時期は11往復という大所帯だった。

昭和39(1964)8月23日、中央東線甲府〜上諏訪間が電化されたことから、中央東線に初の定期電車急行「たてしな」が登場した。使用されたのは三鷹電車区に新製配置された165系7連で、これが「アルプス」電車化の口火となった。昭和40(1965)年5月20日には、中央東線・篠ノ井線新宿〜松本間の全線が電化され、これに先立つ4月1日には松本運転所に165系53両が新製配置された。こうして「アルプス」電車化の準備が着々と進められ、7月1日からは気動車「アルプス」の上り1本・下り2本、「上高地」の1往復、「白馬」の上り1本が電車化された。
同年10月1日改正では165系がさらに増備され、「白馬」「天竜」を併結する列車を除いた中央東線昼行急行の電車化が実施されるとともに、中央東線の急行の愛称名整理が行なわれ、昼行電車急行7往復は「アルプス」、夜行急行1往復は「穂高」に統一された。
昭和41(1966)年12月12日、中央東線に待望の特急「あずさ」が誕生した。これにより「アルプス」1往復が特急に格上げされたが、まだまだ「アルプス」の大勢力を脅かす存在ではなく、昭和43(1968)年10月1日改正では、「穂高」「白馬」「上高地」「白樺」といった列車が消滅、逆に「アルプス」は季節列車を含む電車9往復、気動車2往復の11往復という大勢力に膨れ上がった。
「アルプス」の相次ぐ電車化ですっかり影が薄くなった気動車「アルプス」は、昭和50(1975)年3月10日改正で残りの2往復が電車化され、併結していた「天竜」「かわぐち」も電車化された。これにより富士急行の名物車両・キハ58001〜58003は同鉄道から撤退し、和歌山県のローカル私鉄、有田鉄道(現・廃止)へ転じた。

「アルプス」とは切っても切れない「かわぐち」

デアゴスティーニ編集部

富士急行の「新宿ー河口湖 直通急行運転開始20周年記念乗車券」。キハ58001+キハ58002と165系(上写真)による2枚セットになっている。

中央東線には、途中に身延線、小海線、飯田線といった支線区が分岐しており、「アルプス」には付属編成にこれらの線区に直通する「みのぶ」「こまがね」「八ケ岳」といった列車が併結されていた。また、大月から分岐する私鉄の富士急行へも、この付属編成を充当した直通列車が運転されていた。
富士急行の国鉄乗入れの歴史は古く、富士山麓鉄道時代の昭和9(1934)年にまで遡る。しかし、このときはローカル列車のみで、優等列車による乗入れは、昭和37(1962)年4月14日から運転を開始した「かわぐち」が最初だ。富士急行ではこの「かわぐち」運転のために、国鉄キハ58とそっくりのキハ58001・58002を製造、新宿〜大月間は下りが急行「第1アルプス」、上りが準急「かいじ」と併結することで新宿乗入れを果たした。しかし、乗入れ開始当初は予備車がなかったことから、翌年には3両目のキハ58003が登場した。この車両はキハ58を両運転台化した車両で、便所や洗面所がないユニークなスタイルで登場した。
これらの3両は、「アルプス」全列車が電車化された昭和50(1975)年3月10日改正まで運用され、同年4月24日付で廃車。翌年5月には和歌山県のローカル私鉄・有田鉄道(現在は廃止)へ転じ、第二の人生を送った。有田鉄道転入後は、キハ58001・58002が便・洗面所を撤去されて運用されていたが、平成6(1994)年に廃車。有田鉄道廃止まで残ったのはキハ58003のみだった。
「かわぐち」は昭和50年以後も165系で残ったが、昭和61(1986)年11月1日改正では「アルプス」が183系化されて夜行1往復のみとなったことから廃止された。
このような歴史を持つ「かわぐち」を偲ぶものとして、富士急行では昭和57(1982)年に、新宿〜河口湖間の直通運転開始20周年の記念乗車券を発売している。キハ58001+キハ58002と165系が図柄になった2枚1組で、裏面には急行「かわぐち」の沿革が記されている。

国鉄末期にはわずか夜行1往復に 新鋭E257系の攻勢により姿を消す

デアゴスティーニ編集部

「アルプス」は中央東線の主力急行として知られていた。しかし、相次ぐ特急増発により、残念ながら平成14(2002)年に姿を消した。

昭和41(1966)年に1往復でスタートした中央東線の特急「あずさ」は、昭和47(1972)年10月2日改正で6往復となり、さらに翌年の10月1日改正では「アルプス」3往復を吸収して10往復となった。この頃から「アルプス」の削減、「あずさ」の増発のパターンが始まり、昭和61(1986)年11月1日改正では「あずさ」がほぼ倍増されたことから、「アルプス」はわずか夜行1往復にまで縮小された。同時に「あずさ」と共通運用を図るため「アルプス」も183系化され、165系時代に併結していた「こまがね」「みのぶ」「かわぐち」、並びに共通運用だった「かいじ」が廃止された。なお、「かいじ」は昭和63(1988)年3月13日改正で特急として再登場している。
「アルプス」の183系化・夜行1往復化により、かつての山行き「アルプス」のイメージは完全に払拭されたといってもよかった。JR化後はこの1往復の孤塁をしばらくは守りつづけていたが、平成13(2001)年12月1日に「あずさ」に新鋭のE257系が投入されたことにより183系の運用に変化が生じ、「アルプス」は編成縮小されたうえ、季節列車に格下げされ、下りのみの運転となった。
ここまでくると廃止は時間の問題で、翌年12月1日改正で「あずさ」と「かいじ」の全列車がE257系化されると、わずか0.5往復にまで落ち込んでいた「アルプス」は54年におよぶ歴史に幕を閉じた。

※この記事は、週刊『鉄道データファイル』(デアゴスティーニ・ジャパン刊)を基に構成したものです。

公開日 2015/07/16


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