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M163ヴァルカン

【第55回】M163ヴァルカン  <自走対空砲>


 M163対空自走砲は、1960年代にアメリカで開発された自走式対空砲である。VADSをM113装甲兵員輸送車に搭載して自走式対空砲にした車両で、対空レーダーはM168 20mm機関砲の射撃管制装置の追尾レーダーのみ装備し、捜索レーダーは装備しない。

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ベトナム戦争で活躍

デアゴスティーニ編集部

▲M163対空自走砲。M163は、M113をベースにしたMIM-72 チャパラル地対空ミサイルシステムと併用して運用されてきた。

 1960年代の前期、アメリカのロック・アイランド工廠は2種類の20mmヴァルカン防空システムを開発した。一つはM113装甲兵員輸送車(APC)のシャシーを改良した自走型のXM163で(シャシーはXM741と呼ばれる)、もう一つは牽引型のXM167である。これらは後に、M163、M167としてそれぞれ制式採用された。M163はヴァーモント州バーリントンのゼネラル・エレクトリック社で生産が始まった。
 M163はアメリカ陸軍では混成大隊に配備された。大隊の編成は、チャパラル自走対空ミサイルを12両装備する中隊2個、M163を12両装備する中隊2個となっていた。一方、牽引型のM167は、主に空挺強襲部隊で使用された。
1968年にベトナム戦争に投入されると、M163は短射程における強大な火力を生かして、ジャングルで待ち伏せするゲリラを相手に威力を発揮した。
 後継となる筈だったM247サージェント・ヨークが量産配備されなかったため、M163がその後のアメリカ陸軍における唯一の自走式対空砲になっている。しかし、現在のアメリカ軍は圧倒的な制空戦力で制空権を確保してから地上戦力を投入しており、さらに、低空域目標に対する対空戦闘そのものが、軽便なスティンガーミサイルやアベンジャーシステムの役割となっているため、自走式対空砲が活躍することはあまりなく、後継の自走対空車両は開発されていない。  1989年のパナマ侵攻においては、M163は対空戦闘ではなく地上部隊を支援する目的で派遣された。アメリカ軍においてM163が最後に実戦投入されたのは1991年の湾岸戦争である。

20mm M61ヴァルカン砲

デアゴスティーニ編集部

▲湾岸戦争でのアメリカ軍のM163。

 M163は、M113のシャシーに電動制御の砲塔を備え、6砲身20mmのM61ヴァルカン砲を装備している。砲塔の右側には、アメリカ海軍開発のMk20見越し計算照準器とエンテック社開発のレーダー(測距のみ)を配置している。砲塔は360°旋回が可能(60°/sec)で、動力切れの際には手動で操作できる。
20mm砲はもともと、1950年代にロッキードF-104スターファイター戦闘機向けに設計されたもので、次期戦闘機のF-22ラプターまで装備され続けている。発射速度は1,000発/minか3,000発/minから選択でき、通常、前者は地上目標との交戦時に使用し、後者は航空機に対して使用する。砲手は10発、30発、60発、100発の連続射撃を選択できる。
 弾薬は弾倉に1,100発が収納され、そのほかに1,000発の予備弾薬が搭載される。使用可能な弾薬はAP-T、TP(訓練弾)、HEI(焼夷榴弾)、TP-T、HEI-Tで、初速はすべて1,030m/sec、対空時の最大有効射程距離は1,600m、地上射撃の場合は3,000mである。
 1984年から1988年にかけて、PIVADS(製品改良型ヴァルカン防空システム)計画のもと、オリジナルのM163(自走型、牽引型の双方)のシステムに改良が加えられた。PIVADSでは、新しいデジタル射撃統制システムとレーダー・セットが装備され、またヴァルカン砲の有効射程距離が2,600mまで延びた。
しかし、1980年代前期の時点で、M163はいずれソ連の攻撃ヘリコプター(Mi-24“ハインドD”とその後継と目されたMi-28“ハヴォック”)に太刀打ちできなくなると考えられていた。これらのヘリコプターは、いずれもシュツルム(AT-6“スパイラル”)対戦車ミサイルと強力な機関砲からなる兵器システムを備えていた。
 アメリカ陸軍防空部隊に所属したM163とM167は、すでにスティンガー地対空ミサイル装備のHMMWV、アヴェンジャーと交代している。

諸 元

デアゴスティーニ編集部

▲M163に装備されているM168 20mmヴァルカン砲。

M163
乗員:4名
寸法:全長4.85m、全幅2.85 m、全高(最高点)2.72m、全高(砲塔天井上面まで)1.83m
エンジン:出力215馬力のデトロイト・ディーゼル6V-53 6気筒ディーゼル・エンジン1基
戦闘重量:12,310kg
性能:最大路上速度67km/h、最大路上航続距離483km、登坂能力60%、越堤能力0.61m、越壕能力1.68m

(この記事はワールド・ウェポン<デアゴスティーニ・ジャパン刊>をもとに構成したものです。)

[タイトル写真]U. S. Army/U.S. Marine Corp

公開日 2017/07/27


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