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ロッキードA-12/SR-71“ブラックバード”

【第72回】ロッキードA-12/SR-71“ブラックバード” <偵察機>


 SR-71は、ロッキード社が開発しアメリカ空軍で採用された超音速・高高度戦略偵察機である。愛称はブラックバード。実用ジェット機としては世界最速のマッハ3で飛行でき、 沖縄・嘉手納飛行場にも配備された。

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謎のブラックバード

▲A-12ブラックバード。ピトー管への昆虫の侵入などの異物誤入防護カバーが掛けられていることを注意するサインが下がっている。

 1964年2月29日、リンドン・ジョンソン米大統領は、アメリカがA-11という名称の新型高速高高度偵察機を保有していることを公表し、この偵察機が70,000ft(21,335m)以上の高度を2,000mph(3,219km/h)以上の速度で飛行したことを明らかにした。実際には、この航空機の名称はA-11ではなく、1962年4月30日に初飛行したA-12単座偵察機であった。
 ロッキードA-12は15機が製造され、空軍ではなく中央情報局(CIA)のパイロットが操縦して秘密裏に飛行していた。このうちの2機はD-21無人機を空中発進させるM-21に改造され、また訓練機のA-12B 1機も製造された。さらに、A-12はYF-12A迎撃試作機3機の原型にもなった。YF-12Aはアメリカ空軍による評価が行われたものの、量産には至らなかった。
 ロッキード社は、A-12を原型としてアメリカ空軍向けの複座偵察/攻撃機を製造する計画を立てたが、これはさらに大きなプログラムに発展することになった。R-12偵察機とRS-12偵察/攻撃機のモックアップが製作され、後者はXB-70との競争に敗れて姿を消したが、前者はSR-71に発展した。SR-71は搭乗員の間では“ハブ”と呼ばれていたが、一般には謎に包まれた“ブラックバード”の愛称で有名になった。
 A-12の設計を大幅に引き継いだSR-71Aは、チタニウムを多用して製造された。これは、高速飛行に伴う空力的な発熱に耐えられる強度を持たせるためで、例えばマッハ3を超える飛行では、部分によって機体構造の温度が300℃に達することもある。また、空力的な抵抗は機体速度の増加に伴って劇的に増加するため、胴体は可能なかぎり細くされ、主翼には極端に薄いデルタ翼が採用された。前部胴体には、揚力を発生させるために胴体と一体になった「チャイン」が取り付けられ、高速飛行時に機首下げが発生するのを防止していた。複雑な推進装置の中心を成すのは、プラット&ホイットニーJ58連続ブリード・ターボジェット2基である。低速時にはこのエンジンがすべての推力を供給するが、マッハ3では全推力の18%を供給するだけで、それ以外は空気取入口とマルチプル・フロー・ナセル後部にある特殊なノズルからの吸気によりまかなわれる。SR-71は全機が空中給油装置を備えている。

紛争地域の情報収集

▲KC-135Qから空中給油を受けるSR-71ブラックバード。

 SR-71Aは1966年に就役し、1968年6月には最後のA-12が退役した。二重操縦装置を装備した複座型のSR-71Bが2機製造されたが、その1機が墜落したことからSR-71C練習機が作られた。YF-12Aの後部胴体に静強度試験機の前部胴体を組み合わせたSR-71Cは、不人気でほとんど飛行せずに終わった。
 29機が製造されたSR-71Aは、母基地のカリフォルニア州ビール空軍基地のほか、沖縄の嘉手納とイギリスのミルデンホールの両前方展開基地に配備され、世界中の紛争地域の上空を飛行して情報を収集するという極めて重要な役割を果たした。嘉手納基地から、SR-71は北ベトナム、ラオスなどに対しての偵察ミッションを週1-2回の割合で実施した。最も頻繁に運用されたのは1972年で、ほぼ連日運用された。1990年代にも3551回もの偵察作戦に従事している。 A-12と同様、SR-71Aはベトナム戦争でも偵察活動を行った。
 SR-71Aは1990年初頭に退役したが、湾岸戦争時に十分な情報収集ができなかった反省から、SR-71の復活が試みられた。これも1998年には放棄されたが、NASAには現在もSR-71AとSR-71B各1機が飛行可能状態に維持されている。

諸 元

▲雪で覆われた南カリフォルニアのシエラネバダ山脈上空を飛行しているSR-71Bブラックバード。

ロッキードSR-71A
タイプ:複座偵察機
寸法:全幅16.94m、全長32.74 m、全高5.64m、主翼面積149.10m2
エンジン:静止推力144.57kNのプラット&ホイットニーJ58アフターバーナー付きブリード・ターボジェット2基
重量:自重30,617kg、最大離陸重量78,017kg
性能:最大速度マッハ3.3(高度80,000ft)、最大維持巡航速度マッハ3.2または約3,380 km/h(高度80,000ft)、実用上昇限度24,385m、最大無給油航続距離5,230km(マッハ3)

(この記事はワールド・ウェポン<デアゴスティーニ・ジャパン刊>をもとに構成したものです。)
[タイトル写真]U. S. Army/U.S. Marine Corp

公開日 2018/12/25


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