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Sボート

【第65回】Sボート  <高速魚雷艇>


 Sボートは、第二次世界大戦中にドイツ海軍が使用した高速戦闘艇である。40ノット以上で巡航し、木製船体であるため磁気機雷原を無傷で横断した。外洋によく適合し、また約700海里と、アメリカ軍のPTボートやイギリスの高速魚雷艇よりも相当に長距離の航続能力を備えた。

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Sボートの誕生

▲イギリス軍に投降したS-204艇。

 ドイツの艦艇設計者たちは、魚雷艇を新たに設計することを禁じた1919年のヴェルサイユ条約を巧妙に避けるすべを知っていた。しかしながら、小型の警備艇はどのような拘束の対象にもされていなかった。Sボートの出自を辿れば私的なモーターヨットに遡る。
 ドイツ海軍司令部は、北海やイギリス海峡に展開する高速武装艇の必要性に気づき、民間の造船産業を隠れみのとして、ブレーメンのリュールセン造船所で建造された最新のエンジン付きヨット、オヘカIIに強い関心を示した。全長22.5m、排水量22.5tの丸底船体を持つこのボートは、前代未聞の性能を示した。出力550馬力のダイムラー・マイバッハ・エンジン3基を搭載したオヘカIIは、同クラス中最高速の最大速力34kt(63km/h)を記録したのである。オヘカIIはまた、船体重量軽減のため合金フレームの上に木製厚板を取り付けるという複合船体を採用していた。
 この設計に強い感銘を受けたドイツ海軍は、シュネルボート(Schnellboot:高速艇)すなわちSボートとして知られる軍用型の建造を決定した。まず5隻のSボートが建造されたが、ドイツの技術者たちはすぐに数か所に改善の余地があることに気づいた。このシリーズの2番艇S-2には主舵1基に加えて、その両脇に各30°の舵角を取ることができる2基の小さな舵が付けられた。これは「リュールセン効果」として知られる効果をもたらし、高速での船体安定性増大に寄与した。7番艇のS-7では、船首に「ナックル」が取り付けられ、荒天時の船体安定性効果が一層増大した。
 3基のダイムラー・ベンツ・ディーゼル・エンジンによって最大速力は40kt(74km/h)となり、これは北海やイギリス海峡における彼らの敵であったイギリスのフェアマイルCやフェアマイルDクラスに対し、Sボートが優位を占める上で威力を発揮した。フェアマイルの両クラスは、最大27kt(50km/h)のスピードしか出すことができなかったのである。
 1939年にドイツ海軍はSボートの大量配備を開始し、1940年までに設計全体にさらに改良を加えた。この改良では、上部構造物に集中して追加工事が行われ、その結果、魚雷発射管が船体と一体になった船首楼に収められたほか、コックピットが完全にカバーされて、同クラスの以前のモデルと比べて艇長の視界が格段に改善された。

Sボートの運用

▲30ノットで航走するSボート。イギリス軍に投降した艇の画像。

 Sボートはバルト海の哨戒や、イギリスの港湾への海上輸送進路を迎撃する命令により英仏海峡の哨戒に用いられた。そうした経緯からSボート部隊は、イギリス海軍や王立カナダ海軍の兵力のモーターガンボート、高速魚雷艇、モーターランチ、キャプテン級フリゲートや駆逐艦と対峙した。
第二次世界大戦中、Sボートは101隻の商船を撃沈し、12隻の駆逐艦、11隻の機雷掃海艇、8隻の揚陸艦、6隻のMTB、魚雷艇1隻、機雷敷設艦1隻、潜水艦1隻を撃沈した。Sボートはまた、2隻の巡洋艦、5隻の駆逐艦、3隻の揚陸艦、1隻の工作艦、1隻の海軍タグボート、そして非常に多数の商船を損傷させた。Sボートによる機雷敷設は37隻の商船の喪失をもたらした。また駆逐艦1隻、機雷掃海艦2隻、4隻の揚陸艦が沈没した。
  また、イタリア海軍は、MASボートの航洋性の不足から、Sボートの自軍バージョンを建造した。これは単にMS(Motoscafo Silurante)と呼ばれた。試作艇は、1941年にユーゴスラビア海軍から捕獲した6隻のドイツ製Sボートの様式を基に設計された。MSのうちの2隻は、イギリス軍巡洋艦マンチェスターを撃沈した。1942年9月3日、エジプトに進出した連合軍の前線後方に、14人からなるイタリア海兵隊員の一団を潜入させるため、2隻のMSボートが使用された。
イタリア海軍では、MSを基本に速力を20ノット程度に抑えて航続距離を延伸し、装備を変更した派生型として、駆潜艇VASや機動掃海艇RDVが建造・配備された。
 スペイン内戦中、ドイツ海軍はスペイン海軍に6隻のSボートを供給しており、第二次大戦中には更に6隻を供給した。さらにリュールセン社のいくばくかの補助によってもう6隻がスペインで建造された。ドイツで建造されたボートは1960年代に廃棄され、少数のスペイン製魚雷艇のうち1隻が1970年代初期まで就役していた。

諸 元

S-26クラス
排水量:基準92t、満載115t
寸法:全長34.95m、全幅5.1m、吃水1.4m
推進器:ダイムラー・ベンツ・ディーゼル・エンジンで出力6,000馬力を供給し、3軸を駆動
速力:40kt(74km/h)
航続距離:速力35kt(65km/h)で1,390km
兵装:533mm魚雷発射管2基、20mm砲2門
乗員:21名

(この記事はワールド・ウェポン<デアゴスティーニ・ジャパン刊>をもとに構成したものです。)
[タイトル写真]U. S. Army/U.S. Marine Corp

公開日 2018/05/28


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