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起死回生を図った五四型

【第10回】起死回生を図った五四型


防弾と火力を強化して重量が増加した零戦は、持ち味だった俊敏な運動性能を含めた諸性能が低下した。その飛行性能を回復させるために計画されたのが、三菱「金星」エンジンへの換装であった。「金星」エンジンは、零戦の開発時に搭載する計画もあったが、「瑞星」に比べて大きく、重かったため、搭載を見送られたエンジンだった。

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「金星」エンジンの搭載

デアゴスティーニ編集部

運動性能が低下した零戦五二丙型は、撃墜されることが多くなった。そこで五二丙型を「金星」エンジンに換装し、飛行性能の回復を図ったのが、五四型であった。

零戦は防弾装備と火力の強化によって、アメリカ軍の新型戦闘機に何とか対抗できるようになったものの、重量が増加したため、最大の長所であった身軽な飛行性能を失ってしまった。そこで三菱が提案したのが、中島製の「栄」二一型エンジンを三菱製の「金星」六二型エンジンに換装する改良案だった。「栄」二一型エンジンより3割も出力が大きい1500馬力の「金星」六二型エンジンで、五二型以来低下し続けていた零戦の性能を、回復できると考えられたからである。
当時、陸軍の五式戦闘機や海軍の「彗星」艦爆などが、すでに「金星」エンジンに換装して良い結果を残していた。また同エンジンは、戦時下にもかかわらず比較的順調に生産されており、供給にも問題が少ないと思われたのである。
零戦の設計主務者を務めた堀越二郎技師は、開発当初「金星」エンジンの搭載を考えていた。しかし軽量小型の機体に仕上げるために小型の「瑞星」エンジンが選択され、さらに「栄」エンジンに換装したという経緯があった。そうした経緯を考えれば、堀越技師にとっては、「金星」搭載型こそが本来の零戦の姿だったのかもしれない。
[A6M8]仮称五四型と命名された「金星」搭載型は、機首周りが大きく変わった。「金星」エンジンは「栄」エンジンよりも直径が103mm大きいため、カウリングは全面的に再設計され、同時に機首の13mm機銃も廃止された。結果として五四型は、歴代の零戦各型の中で唯一、機首に機銃を装備しない型となった。またエンジン直径が大きくなったのに伴い、機首自体もやや大きく太くなり、さらに、機首上面の気化器空気取入口も大型になって機首上面に突き出す形になった。プロペラとスピナーは、「彗星」艦爆の「金星」エンジン搭載型から流用された。

回復した飛行性能

デアゴスティーニ編集部

五四型は低下した飛行性能を回復させようとして開発されたが、充分といえるほどには回復しなかった。 「栄」エンジンよりも大きい「金星」エンジンに換装されたため、全面的に再設計された。気化器空気取入口は大きく上面に突き出た形となった。

五四型の改造ベースになったのは五二丙型で、試作1号機は1945(昭和20)年4月下旬に完成して試験飛行が開始された。その結果、最高速度563km、6,000mまでの上昇時間6分50秒という五二型並の性能を示した。「金星」エンジンに換装することで飛行性能を回復させようと考えた海軍と三菱の目論見は、一応成功したのである。五四型は、対等とまでは行かなくても、F6Fに食い下がって戦える程度の性能を持ったかのように見えた。
しかし飛行性能が回復したとはいえ、結局のところ五二型のレベルでしかなかった。この頃、日本本土上空を我が者顔で飛び回っていた、アメリカ海軍のグラマンF6F-5ヘルキャットや、ボートF4U-1Dコルセア両艦戦はもとより、同陸軍のノースアメリカンP-51Dマスタングなどに比べて、すでに性能的劣性は覆うべくもなかった。
それでなくても、この当時の海軍戦闘機隊は、訓練を充分にこなしていない搭乗員の占める割合が高くなっており、たとえ同等の性能を有する新型機が一定数揃っていたとしても、アメリカ軍機の攻勢を阻止することなど、到底不可能だった。
本来、零戦は五二型をもって開発は打ち切られることになっていた。それが、次々に改良を加えて継続したのは、後継機がいっこうに戦力化する目処が立たなかったからである。五四型の開発も、F6FやF4Uに対抗できる性能を求めるというよりも、むしろ、実戦部隊の数的戦力維持を果たすために行われたと考えるべきであろう。
五四型の示した性能に量産価値ありと判断した海軍は、三菱に対し、六四型の名称で生産に入るよう命じたが、すでにB-29の空襲によって、同社の発動機工場は壊滅的な打撃を受けており、「金星」の供給もほとんど滞ってしまっている状況だった。むろん、機体製作工場も含めて、地方都市や山間部などの疎開工場への移転も進められてはいたが、それが軌道に乗るまでには、まだ相当の時間を必要とした。
そのため、五四型の生産も思うように進まず、ようやく1号機が完成しかけたところで8月15日の終戦となり、海軍と三菱の努力も全て水泡に帰した。

遅過ぎた「金星」零戦の開発

十二試艦戦の試作当時も含め、実は零戦の「金星」エンジンへの換装は再三に渡って検討されていて、三二型、五二型の試作当時にも計画はあった。しかし、三菱、海軍双方にそれを具体化できる余裕がなく、立ち消えた。その気があれば、1943(昭和18)年には「金星」を搭載した零戦ができたはず、と断じることもできるが、現実には諸々の事情もあって、そう簡単にはいかなかったのだ。

スペック

デアゴスティーニ編集部

零式艦上戦闘機五四型(A6M8)
全幅:11m
全長:9.121m
全高:3.57m
自重:2,150kg
全備重量:3,150kg
最高速度:時速563㎞
上昇力:高度6,000mまで6分50秒
エンジン:三菱「金星」六二型空冷複列星型14気筒(1,500馬力)
実用上昇限度:10,780m
航続距離:全力30分+850㎞
武装:20mm機銃2挺、13mm機銃2挺、胴体下に250kg爆弾1発、主翼下に60kg爆弾2発または30kg三号爆弾4発

公開日 2014/10/07


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