模型を作ってシェアするホビーコミュニティ ホビコム by デアゴスティーニ

防弾と武装の強化を図った五二丙型

【第11回】防弾と武装の強化を図った五二丙型


零戦は五二乙型で防弾と武装の強化を行ったが、アメリカ軍の戦闘機と対抗するには不充分であった。そこでさらなる防弾と武装の強化が図られ開発されたのが、零戦各型の中で、最も強力な武装と防弾装備を持つ五二丙型だった。しかし、武装と防弾の強化と引き換えに、飛行性能は大幅に失われた。

ブラボー1 お気に入り登録0   ブラボーとは


武装と防弾装備のさらなる強化

デアゴスティーニ編集部

駐機中の零戦五二丙型。同型は主翼に13mm機銃2挺を追加し、防弾ガラスと防弾鋼板も装備した

五二乙型に施された防弾ガラスの装備と、機首の7.7mm機銃の一方を13mm機銃に換装した火力の強化は、アメリカ海軍のF6Fなどを相手にするには充分ではなかった。そのため、さらなる防弾装備と武装の強化が行われることになり、1944(昭和19)年9月に完成したのが五二丙型である。これまで20mm機銃だけが装備されていた主翼に、五二乙型で機首に導入された三式13mm機銃が、20mm機銃の外側に1挺ずつ追加装備されたのである。
13mm機銃の増設に伴って主翼の上下面に点検パネルが新設され、13mm機銃の外側、主翼の下面には、対爆撃機用として空中で炸裂する三番三号(30kg)爆弾を計4発搭載できる爆弾架が常設された。このため、主翼前縁に突き出した20mm機銃と13mm機銃の銃身と相まって、主翼の外見は大きく変化した。特に下面は、爆弾架と点検パネルや空薬莢を放出する打殻放出孔などにより、複雑なものとなった。あまり役に立たないとされた機首左側の7.7mm機銃は撤去されたが、カウリングの銃口は生産の都合で残ったままだった。
五二丙型で、武装の他に強化されたのが防弾装備である。これまでの零戦の防弾装備は、五二乙型で前部風防に45mm厚の防弾ガラスを装備しただけだったが、五二丙型では前部風防に加えて、後部風防内にも厚さ55mmの防弾ガラスが装備されたのである。また、操縦席の背後に厚さ8mmの防弾鋼板も装着された。
しかし、実際にはこれでも不充分だった。胴体後部に防弾タンクを装備する予定だったが、耐油ゴムの生産が遅れて導入されなかったからである。そのため操縦席にある程度の防弾装備が備わったものの、被弾時に火災を起こしやすいのは変わらなかった。

重量の増加で低下した飛行性能

デアゴスティーニ編集部

五二丙型の防弾装備では、後部風防内側に55mm厚の防弾ガラス、操縦席後方に8mm厚の防弾鋼板が装備された

五二丙型で行われた火力と防弾装備の強化は、重量の増加を招いたが、エンジンは三二型以来の、1,130馬力の「栄」二一型のままだった。五二型で単排気管を導入して推力が増したが、五二型に比べて自重で約300kg、全備重量では約400kgも増加した重量に見合うほどのものではなかった。重量増加は当初から分かっていたので、計画では出力向上を図った水メタノール噴射装置を併用する「栄」三一型を装備した五三型が生産される予定だった。しかし、このエンジンの開発が遅れたため、エンジンは「栄」二一型のまま五二丙型として生産されたのであった。
エンジンの出力が向上されずに重量が増加した結果、五二丙型は飛行性能が低下し、速度性能は三二型と同等まで下がった。しかも、戦闘機として大切な機敏さも失い、本来の制空戦闘機としての持ち味を失ったのである。機敏さがなければ、火力が強力であっても敵機を攻撃する機会は少なくなり、防弾装備が充実していても速度が落ちれば敵機から逃げられずに射撃の的になってしまう。五二丙型の火力と防弾装備の強化は、あまり意味を持たなかったのである。もはや零戦の改良は限界を超え、エンジンのさらなる出力向上を図るか、新型戦闘機に主力の座を譲るしかなかった。

最後の主力戦闘機型

しかし零戦に代わる戦闘機を持たない海軍は、飛行性能が大幅に低下したことを知りながらも、五二丙型を主力戦闘機として生産しなければならなかった。零戦の後継機として開発された「烈風」は初飛行をしたばかりで、搭載した「誉」二二型エンジンの不調のために、予定した性能を発揮できなかった。また当時、局地戦闘機として運用されていた「紫電」は、エンジンや機体各部にトラブルが多発していた。改良型の「紫電改」は生産が始まったばかりで、実施部隊への配備には至らず、戦力化されていなかった。
こうした諸事情を踏まえ海軍は、1944(昭和19)年10月から五二丙型の生産を三菱に開始させ、あわせて中島にも生産に入るように指示。三菱における生産数は340機程度だが、中島ではそれを上回る数が作られた。しかし、エンジンの出力向上を果たせなかったことが大きく影響して、実戦部隊の期待を裏切ったのであった。

スペック

デアゴスティーニ編集部

既に効果がなくなっていた機首左側の7.7mm機銃が撤去、主翼の20mm機銃の外側に三式13mm機銃が追加装備された

零式艦上戦闘機五二丙型(A6M5c)
全幅:11m
全長:9.166m
全高:3.57m
自重:2,155kg
全備重量:3,150kg
最高速度:時速540km
上昇力:高度8,000mまで9分57秒
エンジン:中島「栄」二一型または三一甲型空冷複列星型14気筒(1,130馬力)
実用上昇限度:11,050m
航続距離:2,960km
武装:20mm機銃2挺、13mm機銃3挺、胴体下に250kg爆弾1発、 主翼下に60kg爆弾2発または30kg三号爆弾4発

公開日 2014/10/30


ブラボー1 お気に入り登録0   ブラボーとは



コメント0件


コメントを書く1,000文字以内

Ms_noimage

コメントを投稿するにはログインが必要です。