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速度の向上を図った五二型

【第7回】速度の向上を図った五二型


太平洋戦争後半になると、アメリカ軍に2,000馬力級の新型戦闘機が登場し、零戦は苦戦を強いられるようになったため、速度の向上を図って少しでも対抗できるように改良した五二型が作られた。しかし、エンジンのパワーアップがされないままの状態では、速度を向上させるには限界があった。

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速度性能向上の要求

1943(昭和18)年になると、アメリカ軍はF4UやF6Fといった、高速の新型戦闘機を投入するようになった。しかも、鹵獲(ろかく)した零戦から旋回性能の優秀性と防御機能の脆弱さを知ったアメリカ軍パイロットは、格闘戦を避け、急降下して攻撃を加えて逃げ去る「一撃離脱戦法」に徹するようになったのである。零戦の2倍近いエンジン出力を持つ新型機のこの攻撃に対し、零戦は対抗することが難しかった。二二型で回復させた旋回性能も、徹底して格闘戦を避けられては、威力を発揮することができなかったのである。
当時、零戦の後継機となるべき十七試艦上戦闘機の開発が急がれてはいたが、完成するのは当分先の見込みだった。そこで海軍は、当座をしのぐために零戦にさらなる改良を加えることとし、開発を命じたのであった。
1943(昭和18)年8月に初飛行した改良型は、三二型より約20km速い最高時速565kmを発揮したが、速度性能の向上と引き替えに、旋回性能は低下した。しかし、速度を求めていた海軍は、即座に五二型として制式採用したのである。

排気管の変更と切り詰められた主翼

デアゴスティーニ編集部

正面から見た五二型の初期生産機。五二型の主翼は切り詰められると同時に、翼端が円弧状に成形されたため、補助翼は翼端まで達した。

本来なら新型の零戦は、エンジンの出力増大で速度向上を図るのが望ましかったが、「栄」エンジンの出力向上は、限界に達していた。十二試艦上戦闘機の開発当時、重量を軽くするために小型エンジンの「瑞星」を搭載した。そのため、出力の大きなエンジンの換装には機体の大改造が必要だったが、その時間的な余裕がなかったのである。結果的に五二型は、二二型を改良することで、できるだけ速度を向上させることしかできず、そのためには、旋回性能が多少低下しても止むをえないと考えられた。また航続距離に関しても、既にその頃には日本が守勢に転じていたこともあり、短くなっても構わないとされた。航続距離や旋回性能を向上させるよりも、速度を向上させてアメリカの新型戦闘機の速力に対応することが求められたのである。
そこでまず行われたのが、エンジンの排気ガスを利用することだった。二二型までの型式では、エンジンの排気ガスはカウリングの下部に、斜め後方に向けて取り付けられた集合式排気管から排出されていたが、これを各シリンダーから直接に1本の管で排出する推力式単排気管に改めたのである。この排気管は、排気ガスによるロケット効果を期待したものであった。単排気管は右側に6本、左側に5本設け、排気口直後の胴体表面には耐熱板を貼った。
排気方式の変更に伴いカウルラップも改良され、後端に排気管に合わせた切り欠きを設けた。またカウリング上部の気化器空気取入口も、二二型までに比べて横に広がった形になった。しかし初期に生産された機体ではカウリングと排気管の変更が間に合わず、五二型の機体に二二型のカウリングを装備した形で生産された。
排気方式の変更と共に行われたのが、主翼の再度の切り詰めだった。二二型の幅12mで翼端折り畳み装置付きのものから、幅11mで折り畳み装置なしに戻されたのである。ただし、翼端は三二型のような角形ではなく、円弧状に成形されたものだった。このため補助翼は、三二型の2.9mに対して、2.866mと少し短くなり、翼端まで達するようにした。フラップは重量増加に伴う着陸速度の増大を補うために、三二型よりも幅を20cm増し、外見は補助翼とフラップの境界が20cm外側へずれた形となった。また生産途中から、主翼内の燃料タンクには自動消火装置が設けられるようになり、多少は被弾に強くなった。また無線機も新型に変更され、アンテナ支柱が若干短くなった。

性能向上の限界

こうした改良によって、エンジンを換装せずに最高速度を時速20km向上させることに成功した五二型だったが、この程度の速度改良では対抗できないほど、アメリカのF4UやF6Fの速度は上がっていた。それどころか、旋回性能が低下し、しかも防弾装備は、翼内タンクの自動消火装置以外は施されなかったため、被弾に対する弱さは従来とさほど変わらなかった。このため五二型は、急降下性能を向上させ主翼の機銃の強化を図った甲型や、機首の7.7mm機銃の片側を13mm機銃にした乙型、さらに主翼に機銃2挺を追加し防弾装備も備えた丙型が作られた。しかし、改良を行うたびに重量が増加し、速度や上昇力、旋回性能がさらに低下するという結果を招いたのであった。

【コラム】豆知識/アメリカでも高名な零戦

零戦は、日本だけでなくアメリカでも知名度の高い戦闘機だ。その理由は、太平洋戦争の初期に優れた速力と旋回能力を活かしてアメリカ軍機を次々と撃墜し、「ゼロ・ファイター」と呼ばれて恐れられたこともあるが、驚異的な航続距離があったことにもよるだろう。
零戦が登場するまで、800~1,000kmを飛行して空中戦を行い、帰還できる単発単座戦闘機は世界に存在しなかった。当時の代表的な単発単座戦闘機であったドイツのBf109やイギリスのスピットファイアが、行動半径が約200kmしかなかったことを思えば、これは信じられないほどの距離だった。真珠湾攻撃の直後に行われたフィリピン攻撃では、攻撃を受けたマッカーサーは、よもや零戦が台湾から800km以上を飛行してきたとは思わず、空母を利用した攻撃だと思った。事実が分かってからも、しばらくは何かの間違いだと言って、容易に信じなかったという。
また零戦は、空母上で運用する艦上戦闘機でありながら、陸上基地から作戦行動をする部隊の主力戦闘機ともなった。このような例は、零戦の他にはアメリカのF-4ファントムⅡくらいしか存在しない。同機も、艦上戦闘機であるにもかかわらず、空軍、海兵隊用の陸上戦闘機となった。

スペック

デアゴスティーニ編集部

零戦五二型の側面図。最も大きく変わったのは、カウリングとカウルフラップで、後者は、排気管に合わせた切り欠きが設けられた。また、落下式増槽は、生産途中からアルミ合金節約のため、木製に変更された。

全幅 11m
全長 9.121m
全高 3.57m
自重 1,894kg
全備重量 2,743kg
最高速度 時速565km
上昇力 高度6,000mまで7分1秒
エンジン 中島「栄」二一型空冷複列星型
14気筒(1,130馬力)
実用上昇限度 11,740m
航続距離 1,920km
武装 20mm機銃 2挺
7.7mm機銃 2挺
30kg爆弾または60kg爆弾2発

公開日 2014/06/27


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