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急降下性能を向上させた五二甲型

【第8回】急降下性能を向上させた五二甲型


零戦五二型は速度が向上したが、急降下して銃撃を加えた後、そのまま逃れる戦法を採るアメリカの戦闘機に対抗するには、急降下時の機体強度が不足していた。そこで、主翼を強化し、主翼の機銃を換装した改良型、五二甲型が開発された。零戦は旋回性能よりも、強度を優先させねばならない状況になったのである。

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主翼外板の強化

デアゴスティーニ編集部

復元された零戦五二甲型。航空自衛隊浜松基地(現:同基地「エア・パーク」内)にあるもので、復元にあたっては、カウリングなどが大幅に修復されたが、機体そのもののオリジナル度は高い。

二二型や五二型は、アメリカの戦闘機が高速と急降下性能を活かして行う、一撃離脱戦法に対抗できなかった。基本的に格闘性能優先の戦闘機として設計された零戦は、翼面荷重を下げるために可能な限り軽量化されていた。そのため機体の強度が弱くなり、格闘戦を避けて急降下で逃げる敵機を追うことができなかったのである。そこで急降下性能を向上させた改良型として登場したのが、五二甲型である。
五二甲型は、旋回性能を重視した格闘型戦闘機としての零戦の特徴を犠牲にしてまで、強度が追求された。まず、主翼の外板を0.2mm厚くすることで主翼の強度向上が図られた。極限まで軽量化されたそれまでの零戦は、主翼の外板も薄く、急降下で速度を出し過ぎると、風圧で主翼外板に皺が寄ることすらあったからである。五二型までの零戦は、急降下時の制限速度がアメリカの戦闘機より低速の時速666kmだった。主翼外板が厚くされた五二甲型では、剛性が増したことで時速740kmに向上したのである。
急降下制限速度が向上したことで零戦は、逃げるアメリカの戦闘機をある程度追うことができるようになった。しかしこの程度の速度向上では、それ以上の高速で急降下できる頑丈さと、大出力のエンジンを持つアメリカの戦闘機には及ばなかった。世界的な戦闘機の高速化と急降下性能の向上による一撃離脱戦法に対し、零戦の1,130馬力のエンジンには限界があったのである。

武装などの変更

デアゴスティーニ編集部

五二甲型。五二型の生産途中から導入された木製落下増槽の様子がよく分かる。同増槽には、懸吊部の覆いがなく、後端に安定ヒレが付いていた。

五二甲型のもうひとつの改良点が、20mm機銃の変更であった。五二型までの九九式20mm二号三型機銃を、九九式20mm二号四型機銃に換装したのである。この機銃は、それまでの特徴だったドラム式弾倉をベルト給弾式に改良したモデルだ。
零戦のドラム式20mm機銃は、スイスのエリコン社の機銃をライセンス生産したもので、軽量小型にまとめられていた。しかし初期には60発入り弾倉だったため、毎分520発の発射速度では7秒弱で全弾を撃ち尽くしてしまった。このため搭乗員から、携行弾数を増やして欲しいという要望が上がり、海軍もこれに応えて100発入りの弾倉を開発、装備したが、それでも充分とはいえなかった。しかし、ドラム式でこれ以上の携行弾数の増加は主翼の厚さとの兼ね合いで難しいため、ベルト給弾式に改良して火力を増強したのである。
ベルト給弾式に改良した九九式20mm機銃は、主翼の厚さに関係なく、ある程度携行弾数を増やすことが可能になった。五二甲型では携行弾数が125発に向上したことに加え、三二型から五二型まであった弾倉を覆うための主翼下面のふくらみがなくなった。また弾倉の変更に伴い、主翼下面の薬きょうを捨てる打殻放出孔や弾倉点検扉、上面の弾薬を装填するための弾倉パネルなども変更された。
さらに五二甲型には、アルミ合金節約のため五二型の生産途中から導入されていた木製の落下増槽が取り入れられた。同増槽は懸吊部の気流覆いがないため、後端の両脇に小さな安定ヒレが付いていた。

零戦の変貌

零戦は軽量で身軽な格闘型戦闘機から火力と速度、急降下性能を重視した高速の重戦闘機へ脱却を図ろうとしていた。しかし改良を加えても、アメリカの戦闘機に比べると、火力も急降下性能も充分とはいえなかった。さらに防弾装備が弱かったことが、頑丈で防弾装備の充実したアメリカの戦闘機との戦いで大きく不利となった。
このため以降の零戦の改良は、火力の強化と防弾装備の充実を中心に行われることになった。しかし火力と防弾の強化は、必然的に重量を増加させ、飛行性能を低下させることになった。改良する度に零戦は身軽な旋回性能を失い、向上させた急降下性能や防弾装備でもアメリカの戦闘機には及ばなかった。エンジンの出力向上が行われない以上、零戦の改良には限界があったのである。

機銃の携行弾数の問題

零戦は、主翼に20mm機銃を、機首に7.7mm機銃を装備していた。機首の7.7mm機銃は、携行弾数が1挺につき500発と、少ないということはなかった。しかし、この機銃では強固な防弾で頑丈なアメリカ軍機に対しては効果が低かった。これに対して主翼の20mm機銃は、威力は高かったが、携行弾数が少なかった。主力となる機銃の携行弾数が少ないと、空中戦が長引いた時に弾が切れ、攻撃の機会を逃すという事にもなりかねない。20mm機銃の携行弾数の少なさは、深刻な問題だったのである。
この問題を解決するため、零戦五二甲型では、主翼の機銃をドラム弾倉式からベルト給弾式弾倉に換装することで、携行弾数を増やした。ドラム弾倉では、携行弾数を増やすとドラムの大きさが増し、翼の厚みとの兼ね合いで限界があるため、ベルト給弾式にしたのである。しかし、それでも充分といえるものではなかった。零戦と同じ九九式20mm二号四型機銃を装備した「雷電」や「紫電改」の携行弾数は200発以上あったのに対し、五二甲型では125発しかなかったのである。これは、十二試艦上戦闘機の段階で、60発入りドラム弾倉の九九式20mm一号一型機銃の装備を前提として設計されたため、零戦の主翼にはスペースの余裕がなく、携行弾数を増やすのに限界があったからである。このため最後まで零戦の搭乗員たちは、20mm機銃の携行弾数不足に対する不満を持っていた。

スペック

デアゴスティーニ編集部

ベルト給弾式20mm機銃 五二甲型では、主翼の20mm機銃がドラム式弾倉の二号三型からベルト給弾式の二号四型に改められ、携行弾数が増えた

零式艦上戦闘機五二甲型(A6M5a)
全幅:11.00m
全長:9.121m
全高:3.57m
自重:1,894kg
全備重量:2,743kg
最高速度:時速560km
上昇力:高度6,000mまで7分1秒
エンジン:中島「栄」二一型、または三一甲型空冷複列星型、14気筒(1,130馬力)
実用上昇限度:11,740m
航続距離:1,920km
武装:20mm機銃2挺、7.7mm機銃2挺、30kg爆弾または60kg爆弾2発

公開日 2014/07/29


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