【第6回】チェンタウロ <戦車駆逐車>
1980年代半ばにイタリア陸軍の要求により設計されたチェンタウロは、先進の射撃管制システムを備えた新型戦車駆逐車であり、1990年代初めからイタリアやスペインなどで運用された。
先進の射撃管制システムを装備
フィアット社とOTOメララ社が設計したチェンタウロ戦車駆逐車 は、1980年代にイタリア軍が要求したAFV(装甲戦闘車両)ファミリーの一員である。このファミリーには、チェンタウロのほかに、アリエテ主力戦車、ダルド歩兵戦闘車、プーマ4×4および6×6軽車両が含まれる。車両の開発にあたっては、フィアット社が車体と自動車システムを担当し、OTOメララ社が兵装システムを担当した。
1984年にイタリア陸軍が要求した新型戦車駆逐車は、標準的な各種NATO弾薬を発射することが可能な105mm旋条砲と先進の射撃管制システムを備え、路上速度、航続距離、路外性能のすべてに優れていることが求められていた。試作車による初走行は1987年に行われ、1991〜96年に約400両のチェンタウロがイタリア陸軍向けに生産された。同軍以外にこの車両を運用したのはスペインとオマーンだけだが、アメリカ軍には試験用に十数両が貸与されている。
主要装備と派生型
チェンタウロは全溶接鋼鉄装甲製で、前面は20mm弾、その他の部分は12.7mm弾に対する防御力がある。パワーパックは車体前部右側に置かれ、その左側に操縦手が着座する。操縦手の頭上にはハッチが設けられ、暗視装置を装備することが可能。この前部区画は、防火隔壁によって他の区画と仕切られている。車体後部には低いシルエットの砲塔付き戦闘室があり、砲塔には左側に車長、右側に砲手と装填手が搭乗する。砲手には、昼間用光学照準器、感熱画像装置、レーザー測距装置からなる、専用の照準装置一式が用意されている。車長用には専用のハッチと4個の昼間用ペリスコープ、安定化照準器があり、砲手と装填手は装填手頭上のハッチを使用する。
主砲はオトーブレダ105mm砲で、携行弾薬は40発、うち14発は砲塔内で即時発射可能である。副兵装は7.62mm同軸機関銃と7.62mm対空機関銃(合計1,400発)で、砲塔両側には煙幕発生装置が装備されている。またTURMS射撃管制システムは、アリエテ主力戦車に搭載されているものと同一である。
そのほか、チェンタウロの標準機能には、NBCシステム、タイヤ圧中央調整システム、前部搭載ウィンチ、火災爆発検知消火システム、それにパッシブ装甲の取り付け機能などがある。パッシブ装甲は、ボスニアに展開した車両に取り付けられた。
チェンタウロの派生型は、これまでにいくつか提案されている。そのうち、実際に製造されたものとしては、歩兵4名(車体後部のドアから乗降)の収容設備を備える近接支援車両型、60mmオトーブレダ砲を搭載する全長/全幅拡大型、155mm自走榴弾砲用テストベッド、砲塔装備の25mm機関砲を搭載するチェンタウロVBC装甲兵員輸送車などがある
諸 元
チェンタウロ
乗員:4名
寸法:全長8.56m(主砲含む)、車体長7.85m、全幅3.05m、全高2.74m(最高部まで)
エンジン:出力520馬力のIVECO VTCA液冷V型6気筒ターボチャージャー付きディーゼル・エンジン1基
重量:25t
性能:最大路上速度105km/h、最大路上航続距離800km、渡渉水深1.5m、登坂能力60 %、越堤能力0.55m、越壕能力1.2m
(この記事はワールド・ウェポン<デアゴスティーニ・ジャパン刊>をもとに構成したものです。)
[タイトル写真]U. S. Army/U.S. Marine Corp
公開日 2013/06/26
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