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歩兵戦車MkIIIヴァレンタイン

【第95回】歩兵戦車MkIIIヴァレンタイン  <戦車>


 ヴァレンタイン歩兵戦車(MkIII ヴァレンタイン)は、第二次世界大戦時、イギリスの15トン級戦車である。 小型軽量であることから雪中でも良好に機動し、氷結した路面で履帯にアダプターを付ける必要があると指摘された程度で、問題なく運用できた。

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重装甲戦車の必要性

▲IIIとVIIIを水陸両用にしたヴァレンタイン DD。

1938年、イギリスのヴィッカース社は、新型のマチルダII戦車の生産計画に参加するよう請われた。しかし、同社はすでに、A10と呼ばれる重「巡航」戦車の生産ラインを整えていたため、結局、A10をベースとした新型歩兵戦車の製作に参加することとなった。こうしてヴィッカース社が計画したA10派生の歩兵戦車は、1939年7月に量産が発注された。

 実はこのときまで、陸軍参謀はヴィッカース社による提案の有効性を疑問視していた。それは主として、乗員2名の小型砲塔車両では、将来武装を強化する際の足かせになるのではないか、というものであった。しかし、1939年も半ばになって戦争が目前に迫ると、戦車が至急必要となった。
 新型のヴィッカース戦車は、まもなく歩兵戦車MkIIIヴァレンタインとして知られるようになった。この戦車は、A10で得られた経験を色濃く受け継いでいたが、装甲厚8〜65mmとさらなる重装甲化が図られていた。A10で発生した不具合の多くはすでに解消されており、ヴァレンタインにはその解決策が反映されたため、比較的トラブルの少ない車両となった。新型戦車はすぐに量産に入り、最初のヴァレンタインIが1940年後半に完成した。1941年までに、ヴァレンタインはすっかり定着し、その多くが巡航戦車の不足分を埋めるために代用巡航戦車として使用された。
 ヴァレンタインはイギリス製戦車の中でも最も重要なものの一つとされるが、それは主として質より量の面での話である。この戦車は1944年初期の生産中止までに合計8,275両が作られ、1943年のある時期には、イギリスにおける全戦車生産の4分の1をヴァレンタインが占めていた。また同戦車はカナダでも生産が行われ、イギリスではヴィッカース社以外にも数社が製造を担当した。

多種にわたる派生型

▲GMC製6004の210馬力バージョンを搭載した派生型のヴァレンタイン XI。

 ヴァレンタインには数多くの派生型が存在した。砲戦車型では11種の型が作られ、主砲は2lb(40mm9砲(ヴァレンタインI〜VII)から、6lb(57mm)砲(ヴァレンタインVIII〜X)、75 mm砲(ヴァレンタインXI)まであり、加えてビショップと呼ばれる25lb(88mm)野戦砲を搭載した自走砲型もあった。また、特殊用途用ヴァレンタインには、移動架橋車両(ヴァレンタイン・ブリッジレイヤー)から、大型サーチライト車両(ヴァレンタインCDL)、観測指揮車両(ヴァレンタインOP)、地雷除去車両(ヴァレンタイン・スコーピオンおよびヴァレンタインAMRA)に至るまで、ありとあらゆる種類が存在していた。さらに、評価試験や実験目的で1両だけ製作されたものも数多くあり、その代表が水陸両用複合駆動(デュプレックス・ドライブ=DD)システム試験用のデュプレックス・ドライブ・ヴァレンタインである。この種の戦車は大きな成功を収め、一時はヴァレンタインが標準DD戦車として用いられていた。また、ヴァレンタイン火炎放射戦車も作られ、さらには、6lb対戦車砲を防盾の後ろに装着して特殊対戦車車両とする試みも行われた。この戦車は実現しなかったが、後にヴァレンタインのシャシーは、アーチャー対戦車自走砲のベースとして使用されることになった。アーチャーは、上部開放型の車両に17lb(76.2 mm)砲を後ろ向きに搭載したもので、1944年からヨーロッパで使用された。
 ヴァレンタイン戦車の基本車体には、就役期間を通じてさまざまな改造が取り入れられたが、その高い信頼性と堅牢性は常に変わらなかった。ヴァレンタインは、ある時点においてはイギリス軍で最も重要な戦車であり、またニュージーランドなど多くの同盟国軍で使用され、ビルマでも多数が活躍した。カナダで生産された車両の多くはソ連に渡り、ここでも有効に活用されたと見られている。ヴァレンタインはレンドリース用として、II~V、VII、IX、Xの各型合計3,332輌がソ連軍に対し引き渡された。モスクワ攻防戦の最中である1941年11月25日から参戦、最後は満州侵攻にも参加するなど、終戦まで使われ続けた。他のレンドリース車輌同様、独ソ戦の前期には主に南部地域において用いられたが、これはイラン方面から送り込まれるペルシャ補給線があったためである。特に、カフカス方面ではこれら外国製戦車が戦力の7割以上を占めていたという。
 ヴァレンタインには欠点もあったが、全体的に見ると「戦車が最も必要な時期に大量に投入できた」ことが、この戦車の最大の功績であったと言えるだろう。このような役目を果たしたイギリス戦車は、決して多くなかったのである。

諸 元

ヴァレンタインIII/IV

乗員:3名
寸法:全長5.41m、全幅2.63m、全高2.27m
エンジン:出力131馬力のAECディーゼル・エンジン1基(ヴァレンタインIII)または出力138馬力のGMCディーゼル・エンジン1基(ヴァレンタインIV)
重量:17,690kg
性能:最大速度24km/h、最大路外速度12.9km、最大路上航続距離145km、渡渉水深0.914m、越堤能力0.84m、越壕能力2.29m

(この記事はワールド・ウェポン<デアゴスティーニ・ジャパン刊>をもとに構成したものです。)

[タイトル写真]U. S. Army/U.S. Marine Corp

公開日 2020/11/26


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