【第98回】MT-LB <装軌車両>
MT-LBは、旧ソビエト連邦で開発された汎用装軌装甲車両である。PT-76水陸両用軽戦車とその派生型であるBTR-50水陸両用装軌装甲兵員輸送車のコンポーネントを流用して開発された装軌式汎用装甲車両で、主に中型火砲の牽引と砲員および弾薬の輸送を目的として設計された。
MT-LBの特徴
MT-LBの転輪は、PT-76水陸両用軽戦車およびBTR-50装甲兵員輸送車シリーズと同様のものである。サスペンションはトーションバー式で、片側6個の転輪、前部にドライブ・スプロケット、後部にアイドラーが配置されている。MT-LBは通常、350mm幅のキャタピラを装備しているが、雪に覆われた地表で運用する場合は565mm幅のものを使用し、接地圧を低く抑えることによって機動性を高めている。
MT-LBは完全水陸両用で、浮航時はキャタピラにより5〜6km/hの速度で推進する。赤外線暗視装置とNBCシステムも装備されている。旧ソ連の一部の地域、例えば湿地帯や一年中雪で覆われているような地域では、BMP機械化歩兵戦闘車(MICV)の代わりにMT-LBが使用されている。
派生型
ご多分に漏れず、MT-LBのシャシーを利用した特殊車両も多数が作られている。例えば、油圧式ドーザー・ブレードを装備した工兵車両(ADZM)、“ビッグ・フレッド”戦場監視レーダーを車体頂部後方に装備したモデル、化学戦偵察車両(RKhM)、修理車両(MTL-LB)などである。前線地域で修理回収任務に使用されるMTL-LBは、車体前部にA字型フレーム、ウィンチ、工具一式や、その他の特別装備を搭載している。またMT-LBのシャシーは、SA-13“ゴーファー”の基礎としても使用されている。SA-13は、4基のミサイルを即時発射可能位置に搭載する地対空ミサイル・システムである。エンジンとトランスミッションを含むMT-LBの自動車部品は、122mm 2S1自走榴弾砲にも流用されている。2S1は1970年代に就役し、旧ソ連諸国と海外の輸入国で広く使用されている。
また、MT-LBuは、MT-LB装軌式汎用装甲車の拡大型として開発された車両で、転輪を一組増やし片側7輪として全長と全高を拡大し、重量の増加に合わせてより強力なエンジンを搭載した。車内配置等の構成はMT-LBと同一だが、銃塔は装備していない。車高が拡大したことにより車内の容積が大幅に拡大している。
諸 元
MT-LB
乗員:2名+兵員11名
寸法:全長6.45m、全幅2.85m、全高1.87m(ターレット頂部まで)
エンジン:出力240馬力のV型8気筒ディーゼル・エンジン1基
重量:11,900kg
性能:最大路上速度61.5km/h、最大路上航続距離500 km、渡渉水深/水陸両用、登坂能力60%、越堤能力0.7m、越壕能力2.7m
(この記事はワールド・ウェポン<デアゴスティーニ・ジャパン刊>をもとに構成したものです。)
[タイトル写真]U. S. Army/U.S. Marine Corp
公開日 2021/02/24
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