【第110回】アルビオン、ブルワーク <軽空母>
「アルビオン」は、イギリス海軍の航空母艦・コマンドー母艦(ヘリコプター揚陸艦)で、「セントー」級航空母艦の2番艦。「ブルワーク」も、同じくイギリス海軍の「セントー」級航空母艦の3番艦で、後にコマンドー母艦(ヘリコプター揚陸艦)である。
コマンドー任務
イギリス海軍の空母「アルビオン」(R07)と「ブルワーク」(R08)は「セントー」の姉妹艦ではあるが、アングルド・デッキに見立てたラインが引かれていただけの「セントー」と異なり、急造の5.75°アングルド・デッキおよび2基の油圧カタパルトを装備して完成された。この新たな飛行甲板に張り出し部を取り付けるため、3基のボフォース連装40mm砲が左舷から取り外された。
「アルビオン」は1944年3月にスワン・ハンター社のベルファスト造船所で起工された。第二次世界大戦の終結を受けて建造はスローペースとなり、進水は1947年5月となった。一方「ブルワーク」はベルファストのハーランド・アンド・ウルフ社ゴーヴァン造船所にて1945年5月10日起工し、1948年6月22日に進水し、1954年イギリス海軍へ就役した。1956年には第二次中東戦争に参加した。
両艦は、1956年のスエズ紛争の際の上陸作戦に、イギリス軍空母部隊の一角として参加した。このとき「アルビオン」は、シー・ホーク、シー・ヴィクセンの両ジェット機、スカイレイダー空中早期警戒機、シカモア汎用/捜索・救難ヘリコプターを搭載して戦闘機空母として展開し、「ブルワーク」は、シー・ホークおよびアヴェンジャー対潜/爆撃機を搭載した。
しかし「コロッサス」級空母の「オーシャン」および「シーシュース」が同作戦におけるヘリコプター突撃任務で良好な結果を収めたことに加え、これらの艦では新世代ジェット機の運用が困難であったことから、「ブルワーク」はコマンドー母艦に改装されることになった。この作業は1959年1月から翌年1月にかけて行われ、カタパルト、着艦装置、大半の対空砲が撤去された。その代わりに733名のイギリス海兵隊コマンドーを乗せるための設備が付加され、最大16機のホワールウィンド・ヘリコプターで構成される航空群の運用に必要とされる設備と4隻の車両人員揚陸艇(LCVP)用のダビットが付加された。同艦はコマンドー任務用に改装されたものの、対潜攻撃能力は残されていた。
臨時の対潜空母
1961年から1962年にかけて「アルビオン」も同様の改装を受けたが、こちらは900名のコマンドーおよび16機のウェセックス・ヘリコプターが搭載可能となった。1963年には、「ブルワーク」も改装によって同等の能力にまで引き上げられている。「アルビオン」は主に極東に配備され、1966年のインドネシア紛争、翌年のアデンからの撤退に参加している。この直後に同艦は予備役に編入され、最終的には1972年に退役し、1973年に解体された。一方「ブルワーク」はコマンドー母艦として地中海と極東に配備され、やはりインドネシア紛争およびアデン危機に配備された。
「ブルワーク」は1976年に予備役に編入されたが、1977年には臨時の対潜(ASW)空母として改装を受け、1979年に「ハーミーズ」を揚陸作戦任務から解放するため再就役した。その後1980年の空母「インヴィンシブル」登場に伴い、「ブルワーク」は再度予備役に編入され、1981年に処分のため任務を解かれた。
1982年にフォークランド紛争が勃発すると、同艦を再就役させる可能性が浮上したが、調査の結果状態がきわめて悪かったため、この案は却下された。最終的に同艦はスクラップ用に売却され、1984年に解体されている。
諸 元
アルビオン、ブルワーク(コマンドー母艦)
排水量:基準22,300t、満載27,705t
寸法:全長224.9m、全幅27.4m、吃水8.5m、飛行甲板幅37.6m
推進器:ギアード蒸気タービンで出力78,000馬力を供給し、2軸を駆動
兵装:(アルビオン)単装40mm対空砲4門 (ブルワーク)連装40mm対空砲3基(6門)、単装40mm対空砲2門
電子機器:タイプ965(アルビオン)またはタイプ982(ブルワーク)対空捜索レーダー1基、タイプ293対空捜索レーダー1基、タイプ983測高レーダー1基(アルビオン)、タイプ974航海レーダー1基、タイプ275射撃指揮レーダー1基
搭載機:ヘリコプター20機
(この記事はワールド・ウェポン<デアゴスティーニ・ジャパン刊>をもとに構成したものです。)
[タイトル写真]U. S. Army/U.S. Marine Corp
公開日 2022/02/22
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