【第2回】ニミッツ級 <原子力空母>
世界初の原子力空母「エンタープライズ」に続いて開発されたアメリカのニミッツ級は、計10艦が就役した史上最大・最強の原子力空母。世界各地で発生したいくつかの紛争にも参加し、その存在感を見せつけている。
史上最大・最強の軍艦
ニミッツ級原子力空母の最初の3隻は、もともとは老朽化したミッドウェー級の更新用として設計された史上最大かつ最強の軍艦である。それより前に建造された世界初の原子力空母エンタープライズが8基の原子炉を備えているのに対し、ニミッツ級の原子炉は2基で、その原子炉の間の前方に武器弾薬庫区画が設けられている。内部スペースが増えたことで、約2,570tの航空機搭載兵器と1,060万ℓの航空燃料を搭載することができ、この結果、補給を受けることなく連続16日間の航空作戦を実施することが可能になった。また、通常型空母ジョン・F・ケネディと同様の魚雷防護が施されており、一般的な装備品の配列や電子機器類も同一である。
ニミッツ級は甲板のエッジに4基の航空機用エレベーターが設けられており、そのうちの2基は右舷側でアイランドの前方、1基は後方にあり、残りの1基は左舷後方にある。格納庫の高さは7.80mで、他のアメリカ海軍空母と同様、搭載航空機のせいぜい半分しか収容できず、残りは飛行甲板の駐機場所に並べられている。飛行甲板の寸法は333.15×77.11mで、アングルド・デッキ(斜め飛行甲板)部分の長さは237.70 m。飛行甲板には、航空機着艦時の制動索および制動網が4基準備されている。4基ある蒸気カタパルトのうち、2基は艦首発艦位置に、2基はアングルド・デッキに設けられており、これらによって20秒に1機の割合で航空機を発艦させることが可能だ。なお、搭載されているA4W原子炉の炉心寿命期間内では、通常の運用条件下で距離1,287,440〜1,609,300kmの巡航が可能であり、炉心交換まで約13年間運用可能と想定されている。
各艦のさまざまな活動
ニミッツ級空母は世界の紛争地域の近海で、アメリカ国家権力誇示のための重要な手段としてしばしば活用されてきた。1975年5月に就役したニミッツ(CVN-68)は、失敗に終わった1980年のイラン大使館人質救出作戦で洋上基地の役割を果たした。1981年には艦載機がリビア攻撃を行い、1987年には大西洋から太平洋へ移って、次の10年間でペルシャ湾やアジアの海域で各種の作戦に参加。そして1998年にノーフォークに戻り、数年間の炉心交換工事に入ったあと、2003年にイラクの自由作戦に参加した。なお、同艦は日本に3度寄港している。
1977年10月に就役し、大西洋艦隊所属となった2番艦のドワイト・D・アイゼンハワー(CVN-69)は、地中海における8回の作戦に参加し、イラクのクウェート侵攻に対応して動いた最初のアメリカ海軍空母となった。1994年にハイチ沖で平和維持活動を支援した同艦は、引き続きペルシャ湾におけるアメリカの外交政策を支援する作戦に従事してきた。なお、1994年のハイチ沖での平和維持活動期間中、空母ドワイト・D・アイゼンハワーには、通常の搭載機に代えて陸軍ヘリコプター50機が搭載された。また、グラマンC-2Aグレイハウンド艦載輸送機のための設備も整備されている。
1982年に太平洋艦隊所属となった3番艦のカール・ヴィンソン(CVN-70)は、アラビア海のほか太平洋やインド洋で数多くの作戦に参加し、近年ではアフガニスタンでの戦闘で重要な役割を演じている。
以下、4番艦セオドア・ルーズベルト(CVN-71)、5番艦エイブラハム・リンカーン(CVN-72)、6番艦ジョージ・ワシントン(CVN-73)、7番艦ジョン・C・ステニス(CVN-74)、8番艦ハリー・S・トルーマン(CVN-75)、9番艦ロナルド・レーガン(CVN-76)、10番艦ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)と続く。
諸 元
ニミッツ級
排水量:基準81,600t、満載91,487t
船体寸法:全長316.99m、最大幅40.80m、吃水11.30m
飛行甲板寸法:全長333.15m、最大幅77.11m
推進器:A4W/A1 G原子炉2基で蒸気タービン4基に出力208,795kWを供給し、4軸を駆動
速力:35kt(65km/h)以上
兵装:8連装シー・スパロー艦対空ミサイル発射機(再装填不可)3基、20mmファランクス近接防御武器システム(CIWS)4基、3連装320mm魚雷発射管2基
電子機器:(1〜3番艦)AN/ SPS-48E 3次元対空捜索レーダー1基、AN/SPS-49 (V)5対空捜索レーダー1基、AN/SPS-67V水上捜索レーダー1基、AN/SPS-67(V)9航海レーダー1基、航空機着艦誘導レーダー(AN/SPN-41、AN/SPN-43B、AN/ SPN-44、AN/SPN-46×2)5基、URN-20 TACAN装置1基、Mk91発射管制レーダー3基、AN/SLQ-32(V)4電波探知機1基、Mk36スーパーRBOCチャフ発射機4基、SSTDS魚雷防御装置、AN/SLQ-36ニキシー・ソナー防御装置、ACDS戦闘データ装置、JMCIS戦闘データ装置、UHF衛星通信装置4基、SHF衛星通信装置1基
搭載機:最大90機の収容能力があるが、通常78〜80機
乗員:3,300名および航空要員3,000名
(この記事はワールド・ウェポン<デアゴスティーニ・ジャパン刊>をもとに構成したものです。)
[タイトル写真]U.S. Navy
公開日 2013/03/01
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