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S級

【第39回】S級 <潜水艦>


「S」級潜水艦(S-class submarine)は1920年代末に開発されたイギリス海軍の潜水艦である。スタージョン級と呼ばれることもある。第二次世界大戦前から大戦中を通じて総計62隻が建造され、イギリス海軍の潜水艦としては最も多く建造された。

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最も多く建造された潜水艦

デアゴスティーニ編集部

▲S級潜水艦HMS ストーンヘンジ。

 イギリス海軍の「S」級潜水艦は、最初に建造されたのは1928年だが、本クラスが大きな戦果を挙げたのは、第二次世界大戦中のことだった。全部で62隻が完成したこのクラスは、イギリス海軍の潜水艦で最も数が多かった。表向きは「H」級の後継艦であったこの「S」級は、地中海とバルト海での運用を考え、「H」級艦を上回る性能が求められた。それと同時に哨戒海域まで805kmを往復航行できて、さらにその海域に最大10日間とどまることが要求されたため、水上排水量600tという厳しい目標値が設定された。805kmの行動半径を少しでも超える場合は、交信を維持できる能力のあるかなり大型の無線機器を搭載する必要があった。この仕様は後に根本的に見直され、速力9kt(17km/h)以上で1,930kmの航行が可能で、8日以上の待機ができることとされた。
 「S」級では、まず4隻の艦(「ソードフィッシュ」級)が建造された。1931〜33年にチャタム工廠で進水したこれらの艦は、重量軽減にあらゆる努力が傾注されたにも関わらず排水量は640tであった。この設計は実際にあまりに厳しすぎるものだったため、1934〜37年に進水した「シャーク」級8隻では船体が延長されて排水量は670tに緩和された。「S」級は12隻で完結する計画だったが、第二次世界大戦が勃発して、さらに設計の発展が行われることになり、シリーズ生産が開始された。

兵装

デアゴスティーニ編集部

▲S級潜水艦第3グループのP222。

 上部重量軽減のため単装76.2mm砲1門が備え付けられたが、船体を延長して後部の非耐圧部に水上魚雷発射管1基を装備した艦もあった。またこの両者の代わりに、単装101.6mm砲1門を装備した艦もあった。魚雷を12〜13発しか搭載していなかった潜水艦にとって、「柔構造」目標を片づけるのに、砲は有用な手段であった。それらの目標は、魚雷が命中しても内部で爆発せずに、艦外へ突き抜けてしまい、魚雷数が消費される割には撃沈するのが厄介な場合が多かったからである。初期の艦の燃料タンクは耐圧船殻内にあるだけだったが、後の艦では外部タンク(バラストタンク)にも燃料タンクを備えるようになり、極東まで行けるようになった。
当初建造された12隻のうち8隻が喪失したが、これはそれに引き続いて建造された50隻の中で失われた艦数と同じだった。最初の8隻が失われたのはすべて1941年2月以前で、続くグループの最初の艦の進水が1941年10月だったことを考えると、戦争初期の数か月間におけるヨーロッパ海域での潜水艦による作戦が、いかに危険なものであったかが分かる。
これらのS級潜水艦は、後期に製造された艦は多くが1960年代頃までイギリス海軍および供給先の各国海軍で運用された。最も退役が遅かったのはイスラエル海軍に「タニン」として導入された「スプリンガー」で、1972年まで運用されていた。

諸 元

デアゴスティーニ編集部

▲S級潜水艦3隻目のソードフィッシュ。1940年11月にイギリス海峡で沈没した。

S級(後期型)
排水量:水上860t、水中990t
寸法:全長66.14m、全幅7.16m、吃水3.2m
推進器:ディーゼル2基で出力1,900馬力、電動機2基で出力1,300馬力を供給し、2軸を駆動
速力:水上15kt(28km/h)、水中9kt(17km/h)
航続距離:水上10kt(19km/h)で13,896km
兵装:101.6mmまたは76.2
mm砲1門、533mm魚雷発射管6または7基
乗員:44名

(この記事はワールド・ウェポン<デアゴスティーニ・ジャパン刊>をもとに構成したものです。)
[タイトル写真]U. S. Army/U.S. Marine Corp

公開日 2016/03/28


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