【第67回】タラワ級 <揚陸艦>
「タラワ」級強襲揚陸艦は、「Eagle of the Sea」の異名を持つアメリカ海軍の強襲揚陸艦で、艦名は第二次世界大戦中のタラワへの上陸作戦に因んで命名された。イギリス海軍の「インヴィンシブル」級空母の2倍の排水量を誇る巨大な艦船である。
史上最高クラスの強襲艦
「タラワ」級汎用強襲揚陸艦(LHA)は、ミシシッピ州パスカグーラのリットン・インガルス造船所で1972年に起工し、1973年12月1日に進水した。ヘリコプター搭載強襲揚陸艦(LPH)、ドック型輸送揚陸艦(LPD)、揚陸指揮艦(LCC)および貨物揚陸艦(LKA)の能力を1隻に統合することを意図して建造された。9隻が建造されることになっていたが、ベトナム戦争の終結とそれにともなう予算の制約により、実際には5隻しか建造されなかった。これらはインガルス造船所で、複数の船を同時に建造する工法により1971〜78年の間に建造された。
艦の側面は、貨物の積載スペースを最大化するため、全長の約3分の2が垂直である。艦の後部には、全長82m、全幅24m、全高6.1mの格納庫が同寸法のウェル・ドックの上部に設置されており、左舷にサイド・エレベーター(積載能力18,182kg)、後部にセンターライン・エレベーター(積載能力36,364kg)を装備している。
ウェル・ドック、車両デッキ、貨物室および格納庫デッキは、1,000kgの貨物パレットを運ぶことのできる5基のエレベーターによって結ばれている。前方にある3基のエレベーターは車両デッキ用でベルト・コンベア・システムを使用し、後方の2基のエレベーター(ベルトの反対側の端に位置している)はウェル・ドックと格納庫デッキ用である。ウェル・ドックの天井には貨物運搬モノレール・システムが設置されており、パレットを揚陸艇に積み込む際に使用される。格納庫デッキはランプ(傾斜路)で飛行甲板と結ばれており、ヘリコプターを直接飛行甲板へ移動させることができる。
舟艇・航空機の収容能力
ウェル・ドックの前方には車両デッキがあり、ランプによってウェル・ドックおよび飛行甲板と結ばれている。通常、ここには160台の装軌式車両、野砲、トラックとともに40台の水陸両用強襲車両(AAV)AAV7A1が収容されている。ウェル・ドックには最大4隻の汎用揚陸艇(LCU)、または2隻のLCUと2隻の機動揚陸艇(LCM)LCM8、または17隻のLCM6が収容可能で、4隻のLCUと8台のAAV7A1が同時に発進できる。「タラワ」級は通常、甲板上にLCM6と人員揚陸艇(LCPL)各2隻を搭載しており、これらは甲板上の巨大なクレーンで水面に降ろされる。航空機格納庫は、26機のCH-46Eシー・ナイトまたは19機のCH-53Dシー・スタリオン/CH-53Eスーパー・スタリオン・ヘリコプターを格納できるが、通常乗艦する航空部隊は、CH-46E 12機、CH-53D/E 9機、AH-1Wスーパー・コブラ攻撃ヘリコプター4機、UH-1N汎用ヘリコプター2機、AV-8B 6機の組み合わせか、あるいはCH-46E 6機、CH-53D/E 9機、AH-1W 4機、UH-1N 2機のいずれかで構成される場合が多い。これらの構成は任務によって変更される。観測/攻撃機のOV-10ブロンコ固定翼機が運用されていたこともある。輸送される1,900名のアメリカ海兵大隊がさまざまな環境下で訓練できるように、面積464.5m2の訓練および気候順化室が準備されている。また手術室と隔離病室を持つ完全装備、ベッド数300床の医療区画も備えられている。
揚陸艦隊の旗艦役を務めるため、「タラワ」級は、部隊の航空機、兵器、システムおよび上陸用舟艇を指揮統制する統合戦術揚陸戦データ・システム(ITAWDS)を備えている。また揚陸指揮艦と同様の衛星通信システムとデータリンクも搭載している。
「タラワ」級のうち2隻は大西洋艦隊に配備され、残りの3隻は太平洋艦隊に所属している。
諸 元
タラワ級
排水量:38,900t
寸法:全長250m、全幅32m、吃水7.9m
推進器:蒸気タービン 2基 70,000馬力、2軸推進
速力:24kt(44km/h)
兵装:Mk 45 5インチ単装砲 3基、40 mm 機関砲 2門、シースパロー 8連装発射機 2 基
搭載機:ヘリコプター 26機(最大35機)、AV-8B ハリアー II 6~8機
乗員:士官、兵員 759名、海兵隊1個大隊 約2,000名
(この記事はワールド・ウェポン<デアゴスティーニ・ジャパン刊>をもとに構成したものです。)
[タイトル写真]U. S. Army/U.S. Marine Corp
公開日 2018/07/23
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