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駆潜艇(VAS)

【第94回】駆潜艇(VAS)  <支援舟艇>


 「ドイツ海軍のSボート(高速魚雷艇)に対してRボート(掃海艇、高速機雷敷設艇)が存在したのとほぼ同様に、イタリア海軍のMAS魚雷艇に対しても駆潜艇(VAS=Vedette Anti-sommergibiliの略)があった。イタリア周辺海域での艦船を護衛するのが目的だった。

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対潜戦(ASW)の必要性

▲イタリア海軍のSボート自軍バージョンは単に「MS」と呼ばれた。

 駆潜艇とは、潜水艦の駆逐を主任務とし、局地での警備、艦船の護衛に当たる小型の艦艇。おおむね基準排水量は1,000トン以下で、100トン以下の小艇も多い。沿岸部・近海部での行動を想定した航洋性を持ち、対潜戦用の兵装・ソナーを主とした装備を備える。 第二次世界大戦以前の時代、イタリア海軍の計画立案者たち(そして、ほとんどの海軍の立案者たち)は、潜水艦からの攻撃に反撃する可能性についてはほとんど注意を払わなかった。この分野は、攻撃一本槍の指揮官ベニト・ムッソリーニの性格と野望にふさわしい艦隊の創設に腐心していたイタリア海軍の立案者たちにとっては魅力に乏しいものであったのだ。
 しかしようやく、ある程度の対潜能力を持つことの必要性が認識されるようになり、沿岸を受け持つ艦船としてVASが設計された。これらの艦は、大洋航海任務用のコルベットを短期間で大量生産する計画を補完するためのもので、その任務は、イタリア周辺海域や、北アフリカとギリシャとの間、さらにイタリア占領下のドデカネス諸島間などの短い航路を往復する艦船を護衛することだった。
 1940年代初めのこの時期、イギリス潜水艦の活動はまだ最盛期に達していなかったため、VASの設計、開発および建造作業の進展には拍車がかからず、最初のシリーズ30隻(「VAS I」級のVAS 201〜230)がバグリエット、ピチオット、ネーヴァルメカニッカ、セリの各社に発注されたのは、1941年も終わろうとする頃であった。翌年に進水・完成したこれらの艇は全木製または木金混合構造であり、3個の推進軸のうち中心軸は300馬力のカラッロ社製巡航エンジンによって駆動された。このエンジンはまた静音機動用にも使用された。
 これら初期のVASは、2本の側軸をそれぞれ駆動する出力1,500馬力のフィアット製ガソリン・エンジン2基により20kt(37km/h)をわずかに下回る最大速力を実現しており、2基の450mm魚雷落射機を装備していた。しかしこれらの艇は軽自動小銃(単装または連装の銃座に20mm機関砲1門または2門と6.5mm機関銃2挺)しか搭載していなかったため、艇の26個一組の爆雷によって潜水艦を浮上させることに成功しても、それを破壊するには、装備された魚雷を使うほかなかった。

推進器の変更と第3の派生型

▲航行するイタリア海軍の駆潜艇。

 1942〜43年の進水および完成を目指して、第2グループの18隻(「VAS II」級のVAS 231〜248)が1942年にバグリエット、コスタグータ、ネーヴァルメカニッカ、ソリエンテ、セリの各社に発注された。「VAS II」級では、全長がわずかに延長されたものの「VAS I」級を土台としていたが、推進力の多くを中心軸が担っており、側軸用に巡航エンジンを有している点では、「VAS I」級と根本的に異なっていた。表面上はやはり沿岸での対潜任務艦とされていたが、「VAS II」級には高速機雷掃海具が装備されており、艇の作戦上の優先順位が変更されたことを表していた。
 VASには、さらなる発展型で前の2つのクラスとは技術的な関連性がない第3のグループが存在した。これがイタリア北西部ジェノヴァのアンサルド造船所において、同造船所の独自設計に基づいて建造された「VAS III」級(VAS 301〜312)である。本クラスは全長34mとかなり大型の全鋼鉄製の艇で、船体形状はラウンドボトム型(丸型)であった。この艇には本来ならディーゼル推進が適切であったが、イタリアで設計されたエンジンには満足のできるものがなかったため、結局「VAS II」級と同じ推進器を装備して完成した。
 イタリアの旗の下で行動するのに間に合うよう完成した「VAS III」級は、予定数の半分に過ぎなかった。1943年9月のイタリアと連合国の休戦に際して、ドイツ軍がイタリアの北半分を支配下に入れたのに伴い、完成していた同クラスはすべてドイツ軍に接収された。ほとんどが撃沈されたか自沈させられたため、一時でも実際の任務に就いた艇はわずかだった。
別の改良型も24隻発注されたが、これらは1943年9月にキャンセルされ、建造されなかった。

諸 元

VAS II級
排水量:68tt
寸法:全長28.0m、全幅4.3m、吃水1.4m
推進器:フィアット・ガソリン・エンジン2基で出力1,500馬力を供給し、2軸を駆動、カラッロ・ガソリン・エンジン1基で出力300馬力を供給し、1軸を駆動
速力:21.5kt(40km/h)
航続距離:14kt(26km/h)で2,335km
兵装:450mm魚雷2発または20mm機関砲2門、6.5mm機関銃2挺および爆雷26個
乗員:26名

(この記事はワールド・ウェポン<デアゴスティーニ・ジャパン刊>をもとに構成したものです。)
[タイトル写真]U. S. Army/U.S. Marine Corp

公開日 2020/10/30


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